育老日記・痴呆の症状と向き合う備忘録
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■ショートステイ戻り2004/4/1(木) |
初めてのショートステイから戻る日。 夕方5時近くに送ってもらい帰宅。遅かったので何かあったかと心配した。 職員の方が「今日はここにお泊りですよと伝えたら普通に落ち着いていました」と。 ショートステイの様子を書かれた連絡票には、毎日の健康状態と入浴状況と、 「お食事は全量摂取。ご利用中多少とまどいが見られ、 部屋や廊下を行ったり来たりしておりました。 夜間はなかなか寝付かれないご様子でした」と記入されていた。 父に「お泊りどうだった?」と聞いてみると、 「いつも泊りに行ってる所だから慣れてる」と。 毎回のデイサービスで昼食後の仮眠後目覚めると、 朝という感覚になって泊りだと思っているからなのだろうか。 明日2日に介護認定再調査があるのと、主治医の先生が4月から変わるというので、 病院に夕方連れて行く。受診カードが入っている財布を持たせたら、 「お財布が無くなる夢みたんだよ。財布があってよかった」と言い出す。 新しい主治医の先生に症状を診てもらった。 父は車に乗せて病院に行った人が私という認識がなかったのか、 戻ってから記憶が混乱したのか、 病院から戻ったら、「さっき病院に連れてってもらったんだよ。 あの人はもう帰っちゃったのかな?」と。 ■再調査2004/4/2(金) 介護認定再調査。市の担当さんが来てくれた。 父は前回と同様はりきってしまった。 最近書けなくなった自分の名前が書けたり、住所が言えたり。 刺激があると記憶の引き出しがスムーズになるのかも。 これなら毎日調査に来てもらいたいくらい。 要介護度3になるには常時介護が必要かどうかというのが基本になるようで。 脳血栓性の痴呆症の場合、正常な時もあるから判断が難しい。 その後教室の片付けをしていたら、 「引越ししてくるのに時間かかっただろう」と父が言い出す。 一瞬なんの事か解からなかったけど、ダンボールの箱が散乱してるのを見て、 引越しというイメージになったのかも。 「まだまだ片付かないから、手伝ってね」と言っておいた。 午後、教室のリフォーム見積りを依頼していた業者さんが図面を持ってきてくれた。 父が使いやすいように修繕しようと思っているのだけど。 とりあえず他の業者さんにも相見積を出してもらう予定。 ■花見2004/4/3(土) デイサービスのお迎えバスを父は朝6時頃から外で待つ。 庭の掃除を一緒にやっていたら9時頃バスが来たので送り出す。 午後4時帰宅。今日は午後に施設近くの運動公園にバスで花見に行ったらしい。 「展示会するのが初めてって人ばかりで、感激してたよ」と父が言うので、 「何を展示したの?」と聞いてみたら「桜が満開だったよ」と。 展示会とは花見の事だったらしい。 足の爪が伸びていたので爪切りを渡してみた。 自分で切ってみようという努力はしているようだけど、なかなか出来ない。 しばらく様子みてから「切ってあげようか?」と足の爪を切る。 「友達の大島っていうのがガンで死んだんだよ」と唐突に父が言うので、 「連絡があったの?」と聞いてみたら、 「電話で話したんだけど、あんまり知らない友達だから行かなくていいんだけど」 お葬式に行かなくていいという事なのか? 最近父は電話を使えないので、話したというのも妄想の話のようで。 TVで水戸黄門の「風車の弥七」の役者さんがガンで亡くなった事をやっていた。 父はそれを見て「友達の大島さん」と妄想したらしい。 以前犬を連れて約10キロ歩いて警察のお世話になった時も、 「友達の大島さんの車が置きっ放し」と妄想したことが。 いつも行く近所の温泉で、将棋を指している父の知り合いが、 大島さんという名前だったような。妄想で死んだ事にしちゃってるし。 ■雨またはみぞれ2004/4/4(日) 私が風邪ぎみだったので、薬と食事の世話をしたくらい。 父は寝たり起きたり。「今日は何をすればいいんだ?」と言うので、 「教室の片付けしておくといいかも」とやらせておいた。 普通に妄想を見て、うろうろしていた様子。 みぞれが降ってきたくらい寒い日だったので、外に出ることは無かった。 夜のうちに明日持って行くバッグに荷物を詰め込んでおく。 ■お腹が痛い2004/4/5(月) 朝起きると父は外。バッグを持って待っている。 朝食後「お腹が痛いんだよ」と下腹をさすっている。 「どんな痛みなの?」とさすってみると「冷えたイスに座っていたからかな」と。 「お尻を暖めておくと治るよ」とホットカーペットを強にして父を寝かせてみる。 早朝からお迎えバスを待って外に置いてあるイスに座っていたらしい。 父は横になって熟睡する。 9時頃お迎えバスが来たところで起こして見送る。 今日も運動公園で花見があったらしく、公園から直接送りのバスが出たらしい。 4時過ぎに帰宅。「花見でドジョウすくいを踊ったりしました。 花見だったので入浴後の髭剃りが時間なくて出来なかったのですみません」と職員の方が。 お茶を飲んだ後、シワを伸ばしながら髭を剃る。 鼻毛と耳毛と眉毛が異様に伸びていたのでカットする。 耳掃除もする。ふさがっていたんじゃないかと思えるほど溜まっていた。 皮膚があちこちカサカサになっていたのでクリームを塗った。 ■集まり2004/4/6(火) お昼から書道の集まりで花見会をするとのこと。 父に話してしまうと朝から行きたがると予想して、直前まで内緒にしておいた。 午前中私が風邪の症状があったので、父に「病院行くの付き合って」と車に乗せる。 病院の待合室で待たせて診察が終わった後1時間くらい時間があったので、ドライブする。 車の震動が気持ちいいのか父は熟睡。 よだれが大量に落ちるので、ティッシュを胸にそっと置く。 「今日は花見会で皆が集まるんだって。良かったね」と正午いつもの店に送り、 お店の人に挨拶して父を預ける。 午後3時に迎えに行く。 参加した皆さんが「先生おだいじにね。元気でね」と見送ってくれた。 「久しぶりに皆に会えて楽しかった」と喜んでいた。 家に戻って疲れたらしくお茶を飲みながら寝てしまった。 夜9時に「お迎えバス来るから」と外に出ている。 「夜の9時だよ。あと12時間後だから」と室内に入れる。 その後1時間ごとにバッグを持って「じゃあ、行ってくるから」と。 時間の概念がおかしくなっているのが日常だから気にしないことに。 ■珈琲味?2004/4/7(水) 夜中と早朝にバスを待っていた様子の父。 デイサービスを嫌がらないのが助かる。 朝食後珈琲を入れてあげようとしたら、瓶の中に何かが入っていた。 よく見てみたら父の部分入れ歯だった。 以前飲み込んだと勘違いして大騒ぎしてから使用せずにコップに入れて置いたもの。 「お父さん、珈琲の瓶に部分入れ歯が入ってたよ」と見せると、 父は「俺は入れてないぞ」とあわてて否定する。 「いや、別にいいんだけど、ここに入ってると珈琲味になっちゃうかも」と取り出した。 午前9時過ぎにお迎えバスが来て嬉しそうに乗り込む。 午後4時30分頃帰宅。今日もお花見をしに運動公園まで行ったらしい。 「クジがあってさ。当たれば送ってもらえるんだけど、 はずれたら自分で帰らなきゃいけなかったんだ。 お金も持ってないからどうしようかと思った」と言い出す。 冗談なのか妄想なのか判断が難しい。 ■理髪店2004/4/8(木) 午前中父を理髪店に連れて行く。 父を待っている間にそこの奥さんが珈琲をいれてくれた。 息子さんらしき人が父の髪をやってくれている間、奥さんと話す。 痴呆症状の話をいろいろ聞く。父は熟睡していた。 「薬なんて忘れたって平気ってくらいで気楽に相手すればいいのよ。 お客さんにも介護してる人がいっぱいいてね。 毎日一対一で生活してると、介護する方がまいっちゃうから」と。 その後買い物に連れて行く。昼食を注文していたら父が隣にいる人に挨拶している。 「知り合いなんだよ。一の坂の下で商売やっててさ」と言い出す。 北海道での知り合いがこんな場所にいるはずがない。 挨拶された人も会釈してくれたけど、見知らぬ人に挨拶されて驚いてるだろうな。 買い物を済ませて洗車することに。車の中から機械が洗ってくれるのを父は面白がっていた。 給油して別のホームセンターへ。花の苗が咲いているのを見る。 「いやぁ、綺麗だなぁ。」と嬉しそうな父。 夕方近所の桜が綺麗な公園を散歩させて、珈琲を飲んで帰宅。 ■警察に捜索願い2004/4/9(金) 朝6時20分に起きて父を確認しにいったらいない。 靴が無くなっているので外に出たらしい。 財布がいつもの場所に無いので他の入れそうな場所を探してみる。 どこにも無いので所持しているかも。 上着は普段着用しているものが全部あるので、薄い黄色のセーターのままなのかな。 行きそうな場所を車で回ってみる。 以前、散歩といいながら2時間後に帰宅したこともあるので、午前中家で待つことに。 午後1時になっても戻る気配がないので、警察に捜索願いを出しに行く。 今まで行方不明になった日付や発見場所などをメモして持参。 生活安全課で調書を書く。「老人SOSネットワーク連絡票」にも記入。 これは運送業の会社などにFAXで連絡してくれて、 特徴などから不明者を見つけてくれるもの。 午後5時までにどこからも連絡が無い場合は捜索願いで広域に探しますと。 書類を書き込み終わった頃、姉から連絡が入る。 「10キロ離れた畑の中で倒れていたらしい。今から迎えに行ってくる」と。 警察の担当の方に発見したと伝えて、家に戻る。 姉が父を迎えに行ったら刑事さん達が先に着いていたらしい。 発見して通報してくれた方に感謝。 父は「今朝は暗いうちから、花見で歩いた」と言っていたそうで。 履いていたスニーカーをどこかで脱いだらしく、靴下だけ。 ズボンに草の種がびっしり着いている。 畑の真中でひっくりかえって寝ていたのか、顔が日焼けしていた。 帰宅して泥だらけの服と下着を脱がせて風呂に入れる。 足腰がふらふらしている。10キロも歩けば疲れるのはあたりまえ。 食事をさせてベッドで寝かせた。 身体が丈夫で歩けちゃうのも困ったもので。 ■足にアザ2004/4/10(土) 朝起きて父を確認しに行くと疲れた顔をして目を覚ました。 「おはよう。今日9時にお迎え来るからご飯食べて用意しておいて」と起こした。 「足が痛いんだよ。今日は行かない」と言い出すので、 「そりゃ昨日歩きすぎたからね。自業自得というやつですな。 今日は行かないで寝ている?お風呂入って楽しんでくればいいのに。残念だね」と寝かせたら、 30分後に飽きたのか「やっぱり行くよ」と言い出す。 バスを待つ間ゴロゴロしながらぼーっとしていた。 午前9時にお迎えバスが来ると嬉しそうに乗り込む。 夕方4時30分帰宅。「お風呂で足にあざがあったのでシップ貼ってあります」と職員の方が。 昨日畑のあぜ道で倒れた時につけた打ち身らしい。 父に昨日どこに行こうとしてたのかを聞いてみたら、 「前の日に公園を散歩した時に、少ししか歩かなくて運動不足になると思ったから、 散歩したんだよ。途中でどこ歩いてるかわからなくなって、 転んだりしたんだ。痛かったんだよ」と。 「年寄りの歩く距離じゃないし、どこに出掛けたかも解からないし、 置手紙するとかしないと。また行方不明になって警察のお世話になるよ」と言ってみた。 「今日行った会社でも(デイサービスの施設のことか?) 旦那さんがいなくなって、あちこち探しても見つからないから、 警察に探してもらったって人がいてさ。皆どこでも大変だって言ってたよ。 もう迷惑かけないから」って。今話している内容も忘れるんだろうな。 夕食後、無断で外出しようとするので何処に行くのか聞いたら、 「これから知り合いがくるから隣に行ってくる」と言い出す。 隣の和菓子屋さんで何かを買って来ようとしているようで。 誰も来る予定はないので部屋に戻して寝かせる。 ■お礼したい2004/4/11(日) 回覧版に町内の役員一覧表が入っていたのを、 父は10枚もコピーして「誰か欲しい人がいるかもしれないから」と。 今日はコピーをとることが出来るくらい正常。 夕方4時に父は「おはよう」と挨拶してから変な行動をしはじめる。 「警察に通報してくれた人と発見してくれた人にお礼しないと。 車を出して隣町まで連れてってくれ」と言いながらどこかに電話しようとする。 父が指す隣町は方向が違う。誰にお礼をいうのかもわかっていないのに。 「お礼はちゃんとしたから大丈夫だよ。お父さんは警察のお世話にならないように、 無断で出掛けたり、無理な距離歩いたりしないこと」と言って、携帯電話を隠した。 ■食べ過ぎ2004/4/12(月) 朝準備していたら「ご飯まだ食べていない」と言い出す。 さっきパンを食べたばかりなのに。直前の記憶が無くなっている。 9時少し前にお迎えバスが来て嬉しそうに乗り込む。 午後4時30分帰宅。 車から降りてきた片手には山盛りお煎餅を握っていた。 午後5時には夕食を取る。お煎餅を食べたばかりなのに満腹感がない様子。 7時頃冷蔵庫に向かって何か話していたけど、支離滅裂で内容までは解からなかった。 8時に胃が痛いと言い出す。熊の胆を薬箱から取り出して飲んでいる。 その後一度寝て、夜10時に起き出してまた何かを食べようとしている。 「さっき胃が痛いって薬飲んだばかりだよ。食べるの止めときな」と止める。 何で止められるかが理解していないらしい。不思議そうな顔をする。 ■携帯解約2004/4/13(火) 午前中近くの温泉に行きたいというので連れて行く。 知り合いもいるし、温泉のスタッフもいるので大丈夫だろうと。 出掛けようとして父が持っているバックを見たら、 ダンス靴にバナナが1本突っ込んであった。 「靴は必要ないから、タオル持って行こうね」と用意させた。 午後3時に迎えに行くと約束したけど、以前外に出て待っていた事があったので、 1時半に行ってみたら待っていた。やっぱり時間の約束は出来ない。 夕方携帯を位置確認出来るタイプに変更しようとドコモショップへ行く。 特殊なPHSは別メーカーだったので、携帯の解約だけする。 「最近使ってないから、すぐに決めなくていいよ」と父は無関心。 このまま電話を持たせるのをやめる事にするのもいいかも。 そのかわり、警備会社でやってる位置確認サービスを高齢福祉課で頼むのもいいかな。 宇都宮市が契約している警備会社だと補助が出るらしいし。 車の中で「お米炊くのに炊飯器が変なんだよ」と言い出す。 「なかなか炊けなくてさ。しばらくしたら炊けたんだけど」 先日タイマーをかけて炊飯したことを思い出したらしい。 ■新しい靴2004/4/14(水) 昨日購入した新しいスニーカーを履いてご機嫌な父。 「軽くて履きやすいから、どこまでも歩けそうだよ」と。 また行方不明になるくらい歩かれても困るけど。 靴に名前と住所と血液型を書き込んで置いた。 午前9時お迎えバスに足取りも軽やかに乗り込む。 午後4時帰宅。今日何をしたのかが説明できない。 「カラオケした?何かゲームしたのかな?」と質問してみた。 しばらく考え込んで「忘れちゃった」と笑う。 夕食の用意をしていたら、背後で物音がしたので振り返ると、 私の直後に父が立っている。心臓が飛び出るほど驚いた。 「うわ。びっくりした〜」と言うと父は何を驚いてるのかという顔をしていた。 ■野菜の苗2004/4/15(木) 午前中天気が良かったので庭で日向ぼっこをする。 道路を挟んだ先の敷地で新人研修をしていて、掛け声が元気。 父は懐かしそうに見ていた。 午後野菜の苗を買いに行く。父が育てたいという種類を選ばせる。 帰宅して庭の片隅にトマト・茄子・ししとう・三つ葉などを植えた。 その後父はTVを見ながら昼寝。 夕方「今日はどこに行くんだ?何を用意すればいいんか?」と言い出す。 カレンダーを確認させて「今日はもう出かけないよ」と納得させる。 たぶん昼寝して起きた時点で朝だと思っているらしい。 時間の感覚がおかしいのが普通になっている。 ■要介護32004/4/16(金) 再調査の結果介護度が3に上がった。 しかし、利用限度額が上がった分、一回の利用金額も上がったので、 週3回を4回にすると、限度額ぎりぎりになって、 ショートステイも利用できない事になってしまう。 ケアマネさんに相談。 週の2日を今の施設・2日を別の施設利用するとか、 現在の施設より安い施設を週4日使用出来て、 ショートステイも利用できればそのほうがいいんだけど。 どうしてもダメなときは、個人負担で持ち出しする事も検討する。 地方の安い金額のグループホームにでも入れたい。 午前中に庭の隅のガラクタを父と一緒に片付けた。 木材を数本まとめて縛ることが困難になっている。 ゴミの分別が出来ないので見てない所で分けなおす。 夜誰もいない部屋で父にだけ見えている謎の人物が返事をするらしく、 普通の会話のように話している。妄想はしばらく続いた。 ■朝から妄想2004/4/17(土) 早朝庭に自転車が出ていることに気付いた。 真夜中に自転車に乗ろうとして動かしたらしい。 昨日片付けたゴミ袋を別の場所に移動している。 父は半眼になって妄想を見ている様子。 「自転車が動かないから警察に言わなきゃ」とか、 何かを話しているけど、内容が聞き取れない。 「お迎えまだだから準備しておこうね」と室内に入れる。 TV見ながら寝てしまった。 午前9時お迎えバスに嬉しそうに乗り込む。 ■後ついて回る2004/4/18(日) 朝起きて庭を掃いていたら、父が起きてきた。 ぼーっとしながら何をするわけでもなく、掃いている後をついて回る。 気付くと「これなんだけどさ」と電気カミソリを充電器ごと持っている。 「ヒゲソリ自分で出来るなら、しておくといいよ」と言うと、 やっとやることを見つけたという感じで自分の部屋に戻った。 天気がいいので花が咲いている公園を散歩。 昼食後ベンチでしばらく寝ていた。 夜9時に朝だと思って動く。 ■充電器2004/4/19(月) デイサービスの準備をしていたら、バッグの中に充電器を発見。 電気カミソリの充電器を持って行こうとしている。 「これは必要ないから出しておこうね」と取り出した。 数分後もう一度確認したら再度充電器が入っていたので、 「机のいつもの場所に置いておこうね」と父に移動させた。 その後「これが出来ないんだ」とジャケットのジッパーを上下させる。 手を出さずに「ゆっくり真っ直ぐ入れてごらん」とやらせた。 5分くらいジッパーと格闘して出来た時、嬉しそうだった。 ■レンジ異臭2004/4/20(火) 朝父が「ご飯が変なんだよ」と言い出す。 レンジ付近からショートしたような焦げ臭い匂いがする。 ドアを開けて中を見ると炊飯器の内釜が入っていた。 自分で米を炊こうとして、レンジに入れたらしい。 釜も中の米も温まっていたので、数分レンジにかけた様子。 「ここに入れたら炊けないよ。炊飯器に入れないと。 レンジが焦げ臭いのが判らない?」と聞いてみると、 「判らない」と不思議そうな顔をする。 窓全開にして空気の入れ替えをした。 午後1時30分ケアマネEさんが来てくれた。 父はデイサービスの送迎がクジで決まるなどと妄想の話をする。 年間のショートステイとデイサービスの計画を渡して、 予約をお願いする。 ■行方不明2004/4/21(水) 朝あちこちの電気が点いたままで、父がいない。 テーブルの上に書きおきがある。 一部文字が判読できないが「演習に参加」とあるので、 父は30年前の記憶に戻っているらしい。 着ている服を残っている服から想像して、メモに書き留めておく。 午後まで戻らなかったら捜索願出そうと思っていた時に電話が。 500mくらいの場所で保護されていたので迎えに行く。 父はお茶をいただいてのんびりしていた。 「橋を渡ろうとしたんだけど無くてさ。ぐるぐる歩いたよ」と。 保護してくれた方にお礼を言って帰宅。 デイサービスの連絡帳に行方不明になった事などを書き込んだ。 午後保護していただいたお宅に挨拶に伺って朝の状態を聞く。 「うちの前を歩きまわっていたんで挨拶してみたら、 庭の花が綺麗だから見せてくださいって。 温泉に行こうとしたけど、道が解からないって言ってたから、 その温泉は車じゃないと行けない距離なので変だなと思ったのね。 それで首につけてた名札の連絡先に電話したのよ。」と。 父が行こうとしていた温泉の名前はかなり遠い場所。 デイサービスで利用している施設の名前に似ているので、 お迎えバスが来るのを忘れてデイサービスに行こうとしたのかも。 菓子折りを渡したら「うちで採れたのでお父さんと食べてね」と 採れたての椎茸を袋いっぱい頂いた。感謝。 ■相手に出来ない2004/4/22(木) 朝から父に干渉しなかった。様子は時々見たりしたけど。 また行方不明になるかもとか、危ない事をしていないかとか過敏になっている。 父の為にも自分の為にも接触を極力抑えた。 お昼頃父が「今日はお腹が痛かったからお休みしたよ」と言い出す。 「今日は木曜日で温泉行く日じゃないから、ゆっくりしてね」と伝える。 午後父はベッドで寝たり、起きてうろうろしていた。 夕方「電話をかけてくれ。車を買う」と騒ぎ出す。 「車も自転車も乗っちゃダメだと医者に言われたから買えないよ」と言うと、 「隣近所に助けを求める」とお隣に行こうとする。 止めると「警察に行く」と騒ぐ。 「干渉されて何にも出来ない。いじめだ」と大騒ぎ。 手に負えないので姉に連絡。 その後庭を掃いていると、さっきの騒ぎを忘れたらしく外に出てくる。 「花がいっぱい咲いたな」と普通の会話をする。 仕事帰りに姉が寄ってくれて父の話を聞いて説教してくれた。 姉にいろいろ話したので納得したのか、その後父はTVを見て就寝。 心底疲れた。痴呆の症状と解かっていても辛い。 ■靴のまま家に2004/4/23(金) 朝起きて父を確認してほっとする。 庭をうろうろしていた父が靴のまま家の中を歩き回る。 痴呆の症状が急激に進んでいるのを感じる。 私がおかしくなりそう。頑張る気力も失せている。 出口の見えない迷路で迷っている気分。 これ以上症状が進まないようにするにはどうすればいいのか。 父が動けるうちにグループホームの入所を考える事にする。 介護度が上がって追加でデイサービスが利用できたので、 今日は預ける事が出来た。 午前中に市の高齢福祉課の方が警察からの徘徊連絡を受けて訪問。 状況などいろいろ話す。徘徊センサーなどの利用も考えたけど、 それすらも持ち歩けない状況なので無理。 新しい施設も増えているとのことで、検討する時期に来ているだろうと。 姉とケアマネさんに相談してみようかと思う。 ■食べ過ぎ2004/4/24(土) ここ数日便秘だと言っていた父は今日は調子良いらしい。 デイサービスの準備していたら「昼ご飯食べたのか?」と言い出す。 TVつけさせて時間の確認させる。 やることがないと何か食べている。楽しみが食べる事だけなんだろうな。 寝て起きたら食べるの繰り返し。それでもいいと思う。 食欲が無くなる時期がやがて来るだろうし。 夕方デイサービスから戻った父は家に入る前から興奮して話をする。 「今日は4月の誕生日会で3月代表で挨拶したり。 歌ったり、ゲームしたりして表彰されちゃったよ」と。 夕食後何かを伝えたかったらしいが喋ろうとして涎が出たので、 あわてて拭いたら喋る内容を忘れたらしい。 ■伯父と伯母訪問2004/4/25(日) 牛久の伯父が様子を見に来てくれると数日前に連絡があった。 伯父が来るということを父には話さなかった。 「今日はお父さんに用事があるので出掛けないように」と 紙に書いてテーブルに置いていたら「魚釣りにいくのか?」と聞いてくる。 父はここ数年魚釣りなどしていないのに。 姉が来てくれて父の相手をしてくれた。 午前中伯父と伯母が来てくれた。 父は久しぶりにあった弟に嬉しそうにしていた。 「散歩に出て雪が降ってて、あぜ道で転んで寝てたら警察呼ばれた」と、 先日(4月9日)の行方不明騒ぎを説明していた。 4月に雪が降ったという言動に痴呆症状が出ている。 様子を見せられてよかったかも。次の機会には症状も進んでいるだろうし。 その後、河原に連れて行く。 流れのない川を見ながら石を拾ったり投げたり。 昼食後眠そうな父をベッドで寝かせて姉と買い物に行く。 以前紹介してもらったグループホームも外から見てきた。 戻って来たら自転車を動かした様子。どこかに出かけたかったのか。 「自転車に乗ったら帰って来れなくなるよ。温泉には送り迎えしてくれるし。 自分で行かなくて済むんだから楽じゃない」と姉も説得してくれたが、 その理由を考える脳は働いていないらしい。 周りの迷惑や心配などを考慮する思考が残っていない。 父の世界は自分が中心になっている。 ■炊飯器が床に2004/4/26(月) デイサービスから戻って、いつものように何をしたか聞く。 サイコロゲームをして、昔話をしたらしい。 その後庭を掃いていたら、父が後をついてまわる。 うっとおしいが何をする訳でもないので、放っておく。 庭に数分いると飽きて室内に戻る。これを数回繰り返した。 そのうち書道の名簿を持って出てきた。 何かを私に伝えたいらしいが言葉がみつからない様子。 放っておいたら何も言わずに戻ってしまった。 室内に戻ると炊飯器が床に転がっていたので元に戻しておく。 名簿も棚に戻してしまった。 ■雨なので安心2004/4/27(火) 朝父に米を研がせて水入れさせて、スイッチの位置を教える。 指示すればその場では理解するようだけど、また忘れるだろうな。 雨なので行方不明になるような散歩はしないだろうと放っておく。 夕方「今日はどこに行くんか?」と聞いてきたので、 「火曜日で何も予定ないよ」と伝える。 夜10時過ぎに父の部屋の戸が10cm開いてたので中を覗いたら、 そこに父が立っていてびっくりした。 部屋の外を覗いている訳でもないらしい。 父にだけ見えてる誰かに向かって独り言を繰り返してた。 ■お茶2004/4/28(水) 父は昨日飲ませた眠剤が効いたのか朝まで熟睡した様子。 「9時にお迎えバス来るから朝ご飯食べて準備しようね」と朝食を取らせる。 少し目を離した後、青汁のようなものをどんぶりに入れていた。 「これは何?青汁?」と聞いてみると「お茶だよ」と袋を持って来た。 どんぶりに急須に入れる量の5倍のお茶の葉を入れて、 お湯ではなく水を注いだらしい。いれなおして飲ませた。 8時前からバッグを下げて庭でバスを待つ。 迎えに来た職員の方が「ずいぶん早くから待ってましたね。 私の通勤がここの前通るので、乗せてっちゃおうかと思いましたよ」と。 奇怪な行動をしていても好きにさせるしかない。 デイサービスに行っている間は父を忘れることが出来る。 戻って来た父が机に葉書を並べていたので、 「伯父さんに手紙書いたら?来てくれた御礼状出そうよ」と 絵手紙用の葉書を渡してみた。 父は1時間近くかかって誤字脱字だらけの葉書を書いた。 読ませてみると書いた内容が読めない。 「後で書き直すよ」と言いながら新しく書きはじめた。 夕方ご近所の方が亡くなったという知らせが。 明後日が友引なので、葬儀が一日ずれ込むことに。 「通夜と葬儀に私がうちの代表で手伝いしてくるね。 お茶出したり受付したりっていうのをするんだわ」と父に伝える。 昔馴染みの訃報を聞いて反応はどうなのかと思ったけど、 意外と淡々としていた。 「葬儀の手伝いに出るので当日父の様子を見に来てほしい」と姉に頼む。 ■通夜2004/4/30(金) 今日も追加でデイサービスが利用出来た。 夕方父が戻ったので「お手伝いしてくるから留守番していてね」と通夜に出かける。 姉が仕事帰りに父の相手をしてくれた。感謝。 ■手が震える2004/4/29(木) デイサービスが追加で利用出来るので用意していたら、 「今日は行くのやめる」と言い出す。 「お通夜と告別式の手伝いの打ち合わせをするので集会場に集まるんだよ。 お父さんが一人で家にいると心配だから、お風呂行ってきて」と送り出す。 夕方父が戻って来て、今日なにをしたかを聞く。 「指の体操を毎回やるんだ」とやって見せてくれた。 指を折り曲げたり伸ばしたりする動作が震えてしまっている。 その後夕食に蕎麦を出したら喜んでいた。 |