育老日記・痴呆の症状と向き合う備忘録
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■泥棒の入ったような部屋2004/1/1(木) |
昨日の年越しで、格闘技の番組を見ていた父は、 自分がその会場にいると錯覚したようで。 観客を見て、「この人たちは何で帰るのかな?」と言い出す。 「電車とか、車とか、遠い人はホテルに泊まるんじゃない?」 「自転車じゃ帰れないとこからも来てるのか」と感心してる。 紅白を見たりしていたら、老人会の集まりに参加していると勘違いしたようで。 「そろそろ、うちに帰らなきゃ」とか、 「別の教室で教えなきゃいけないんだ」と書道の道具をまとめたりしている。 どうにか寝かして、お正月の朝。 父の部屋が泥棒に入られたようなスゴイ状態に。 衣装ケースが散乱して、ベッドの上にぐちゃぐちゃにモノが乗っている。 「自転車のカギがないんだよ」と探している様子。 「昨日はちゃんとあったから、朝どこかに入れちゃったんだね」と探させる。 そのうち、「盗んだだろう」と言い出す。 痴呆が進むと出る盗んだ疑惑がはじまったなと思った。 「どこかに持っていったから、自転車に乗れないんだ。」 「誰も持っていかないよ」というと、「そんなはずはない」と怒り出す。 そのうち、朝方はいていたズボンのポケットにカギを発見。 「カギあったよ〜。ポケットに入れておいたんだね」といったら、 「すまなかった。」と頭を下げた。 あんまり素直に謝られたので、拍子抜けした。 カギと一緒に入っていた小銭を「お駄賃」といってくれた。110円(笑) 部屋の中を片付けて、普通に生活できるレベルに戻した。 夕方犬の散歩に行くというので、頼んだら玄関に入ってきて、 「犬がいない」と言い出す。 「犬小屋にいるよ?よく見てみて。呼んだら出てくるよ」というと、 「いたいた。じゃあ、行ってくるね」と散歩に行く。 犬が一緒なら、ちゃんと戻って来るだろうと思いつつ、 途中で事故にあったら大変だなと心配してみる。 介護犬はちゃんと自宅に父を誘導してくれたようで。 レンジで温めるおこわのパックを、トースターで焼いてしまって、 溶けてぐにゃぐにゃになったものが出てきた。 今まで出来ていた事がどんどん解らなくなってきている。 ■電気つけてまわる2004/1/2(金) 深夜4時頃までは最高にひどい状態。 父は、寝てすぐに10分間隔で起き出して、騒いだり電気つけたりけしたり。 ドアをガタガタ開けたり閉めたりしてるので、 寝た方がいいよと背中押してベッドに誘導したら、 何を勘違いしたのか、殴ろうとしてきた。 私が誰かもわからなかったみたい。 体力だけはあるので、殴られたら痛いだろうなとびびった。 なさけなくなって泣いたら、私だと気付いたようで、 「いつも世話になってるのに申し訳ない」と言い出す。 昼間姉が来てくれた。部屋の片づけをしてくれる。 小学1年生の国語の問題集があったので、父にやらせてみる。 「あ」のつく二文字の言葉を書きましょうという問題に答えられない。 絵を見て、何が書かれてるかを質問しているものに、 てんとうむしを見て、「蛇だ」という。 物の認識が出来なくなっている。 犬の散歩を頼んだら、つないでる鎖を引っ張って行こうとする。 散歩用リードに付け替えることが出来ない。 危ないかな?と思ったけど、散歩に行ってもらう。 無事帰宅したのでほっとする。 夜9時に「おはよう!」と言っていた。 誰もいない部屋で誰かに話をしている。父には誰かが見えているらしい。 「そろそろ寝たら?」と寝かせようとすると、 「この部屋は何番なんだ?」とどこかの旅館に泊まってるらしい。 「今から日光に行くんだよ。」「もう遅い時間だから、明日にしなね」と寝かせた。 父は誰かと旅行でどこかに泊まっていると錯覚しているようで。 ■重要なもの2004/1/3(土) 早朝、父に起こされた。 カードと現金がないというので、探させる。 「重要なものを入れてる場所はどこかな?」と聞いてみると、 いつも置いてある場所じゃない所を開いて、「ここに全部まとめたんだ」と。 「いつも置いてある場所から持ってきちゃダメだよ」と元の場所に戻させる。 普段入れたことのない場所にカードと現金を移動してしまって、 自分がどこに入れたかを忘れてしまっていたようで。 「誰かが隠しちゃったんだな」と自分で全部まとめたということを忘れている。 初詣を兼ねて、岩舟山に姉と父と登ってくる。 急な階段を休みながら登ったが、左足がきちんと上げられない。 「昔は4段抜きで登れたのになぁ」と体力が落ちてるのを実感したようで。 杖になるような長い木を探して、どうにか登った。 お参りして、降りるのは無理だろうと、車を山頂まで姉に移動してもらう。 家に戻ると、私に「岩船山に登ってきたんだよ」という。 「一緒に登ってきたじゃない」というと笑ってごまかしてた。 その後また現金がなくなっているので探させる。 今度はジャケットの中に入れていたようで。 また元の場所に戻すようにして、「指差し確認!」と念を押す。 ■戻れない2004/1/4(日) 深夜1時。自転車を動かす音がしたので見に行く。 父が「朝ごはん食べたので、でかけてくる」と言うので、 「まだ夜中の1時だから、寝て、朝になったらでかけなね」と寝かせる。 夕方、自転車が戻ってきてなかったので、まだ出かけてるなと思ったら、 姉が父と自転車を車に乗せて来たところだった。 「知り合いのおばさんから連絡あって、 今日の午前中にいきなりおばさんちに行ったらしいんだ。 お昼ごはんを食べさせてくれて、大きな通りまで見送りしてくれたらしいんだけど、 そのあと、隣の駅まで走っていって戻れなくなったみたい」 おばさんから連絡をもらった姉がうちに来たら、まだ父が戻ってないので探しに行ったところ、 駅の売店のおばさんにわけのわからないことを言っている父を発見して、 連れ戻してくれたようで。 そのあと、父は着ていたジャケットをハンガーにかけようとして、 庭の池がある方の窓を全開にしていた。 ■夜中動き回る2004/1/5(月) 1時過ぎた頃、父は「おはよう」といって出掛ける服装。 「今夜中の1時過ぎで、これから私たちは寝るからね」というと、 自分の部屋に行く。昨日のこともあるので、大丈夫かと思ったけど、 見張っているわけにもいかないので、寝た。 真夜中3時頃、自転車をガチャガチャさせる音がしたが、出かけなかったようで。 朝、8時に自転車の鍵を持ってくる。 「自転車に乗ってもいいけど、また帰り道がわからなくなるかもしれないから、 今日は家の片付けでもしてたら?」というと、 「今日は出かけないよ」と片付けをはじめていた。 夕方6時過ぎに玄関とトイレ付近でガタガタ音がする。 「どうしたの?」と聞くと、「寝ようと思って」と言う。 自分の部屋が解らなくなっていた。 ■自転車に乗れない2004/1/6(火) 昨日の事があってか、父は自転車に乗ろうとしない。 朝、「何をしていいのか解からない」と言う。 「教室の片付けを出来るとこまでやっておくといいよ」と言ってみると、 ぼーっとして座っていた。 お昼に食事に連れ出して、公園を散歩させる。 たまたま目が合った男性に挨拶したら、父の昔の同僚だった。 父と同い年の男性は父の異変に気付いて、優しく話し掛けてくれた。 昔話をして、少し脳の活性化になったようで。 帰り道にスーパーで買い物する。 歩いて買い物に行ける事に気付いた父は、 「たまに歩くと昔の知り合いに会えていいな」と喜んでいた。 ■むこうの家2004/1/7(水) 今朝の父は多少まともだった。 昨日は鍵が回せなかったけど、今日は自分から携帯と財布持ったと申告して、 出かけて来ると自転車に乗ってどこかへ行ったようで。 午後に戻って来て、「むこうの家に行く前に寄った」と言い出す。 「むこうの家ってどこにあるの?」と聞いたら説明できない。 昨日まで寝てた家だというから、それはここだと納得させるまで仏壇見せたり、教室見せたりした。 水曜なので、教室に生徒が来るからと片付けさせた。 水道が出なくなって、「水道も止まったんかな?」と言っているので調べたら、元栓を父が締めてた。 ■行方不明2004/1/8(木) 朝、父は「おはよう」と挨拶したあとに出かけてしまったので、 そのうち帰宅するだろうと思っていたら、午前9時過ぎに男性二人と一緒に帰宅した。 「石橋町の役場の者ですが、帰り道が解からないらしいので送ってきました」と。 「お世話になりました」と恐縮した。 父は近くのコンビニまでパンと牛乳を買いに行って、 その後反対方向にどんどん走ってしまったらしい。 場所が解からなくなって、農家にいた人に尋ねたら、 役場に連絡してくれて、自転車に貼っておいた住所で調べて連れてきてくれたようで。 「自転車に乗って家に帰る方向も解からなくなってしまったんだから、 だんだん記憶が衰えて来てるんだね。これからは車で送ってあげるから、 黙って出かけないように。自転車も乗らないように。」とカギをかけた。 痴呆症が進行してるのを実感する。 買って来たクリームパンを食べ続ける。半分夢の中にいるような感じ。 父が、住所がわからないと言い出す。 「ここは石橋か?」「石橋に住んだ事はないなぁ」と言うと、 「住所がわかるものがないんだから解らない」と。 記憶から住所が欠落していて、忘れようとしても思い出せない状態。 今度名札つけようってことにして、紙に住所を山ほど書いて、 全部のポケットに入れさせる事にした。 私が誰かは解らなくなっている。 食事は納豆と豆腐と春巻とイカフライと野菜サラダを出した。 指示されると食べることが出来るけど、目を離すと「食べ方が解からない」と言い出す。 今まで、痴呆症の症状が出てから、よく自転車に乗って出かけたり、 自分で食事を用意して食べたり出来た事が奇跡だったとポジティブに考えることにする。 さらに進行していくんだろうな。 夜10時、「話があるんだ。自転車取り上げられたから、この会を脱退する。 誰か知らない人のあんたにそんなことされても困る。」と言い出す。 「私はあなたの娘だよ?」っても解らない。 しばらく問答していたけど、埒があかないので、とにかく一度寝てねと電気消した。 自分がどこにいるかも認識してないみたい。まいった。 姉に相談して、「自転車の鍵つけていい・また行方不明になったら納得する」とのことで、 自転車に鍵を戻した。 30分もしないで起き出してきた。 「自転車乗れるように鍵つけておいた」と言ったら、私が誰かわかったみたい。 自分の親に、誰か知らない人と言われるのが辛いと思った日だった。 ■介護認定とは2004/1/9(金) 今日の父は比較的正常。庭の木を剪定したり、掃き出しをしたり。 老人ホームなどのデイサービスを利用するには、介護認定されてから。 市の担当者が認定のために自宅に訪問して、認定の審査をするそうで。 正常な時に来られたら、認定されないんだろうな。 実際に痴呆の症状がひどく出ている時は、人と会話出来ないくらいになっているけど、 今日のように正常だと、ただのお年寄りが忘れっぽくなってるという程度。 この落差を伝えることが出来るのだろうか?不安。 ◆訪問調査員のチェック内容 ■短期記憶: ・身近にある3つの物を見せて、いったんそれをしまい、5分後に聞いてみた結果 ■日常の意思決定を行うための認知能力: ・見守りが必要・判断力が弱く、毎日の日課をこなすためにも合図や見守りが必要になる。 ・判断できない・意思決定を行う能力が著しく低下しており、ほとんどまたは全く判断できない。 ■精神・神経症状の有無: 失語、言語(口頭言語と文字言語の両方)・ろれつが回らない(咽頭、軟口蓋、舌、口唇等)の麻痺・ せん妄(妄想、錯覚、偽幻覚、幻覚、不安・恐怖、精神運動性の興奮(夜間せん妄) ・傾眠傾向・失見当識・失認(後天性の知覚と認知の障害)・失行(麻痺、運動失調等) ■温泉2004/1/11(日) 父は自転車で、出掛けて行った。今日も、ちょっと正常。 無事戻ってきたら、「一緒に行った男の子は何て名前なのかな?」と言い出す。 「誰と行って来たの?」と聞くと、「知り合いのおばさんと温泉で会った」と。 お世話になったおばさんに電話してみると、 父は連絡なしでおばさんの家に現れたそうで。 温泉に付き合ってくれて、買い物まで一緒にしてくれたのだとか。 「この前と比べるとまともに話出来たけど、 この前は言ってることが普通じゃなかったね」と。 それでも、お世話をしてくれるのが有難い。 ■多気不動尊2004/1/12(月) 姉が多気不動尊に行くというので、父を誘って大谷に行って来た。 急な階段があるけど、杖を貸してくれるので、父も杖をつきながら登った。 護摩焚きをする本堂に初めて入る。 太鼓とほら貝と鐘の音と、読経が混じって、不思議な空間に。 かえりにかぼちゃ饅頭と、いも串(味噌たれ)を買って食べる。 夕方、「車を買うから、それで送り迎えして欲しい」と言い出すので、 「私の車は二人乗りだから、お父さんは送り迎えできるけど、 他の人まではできないよ」と断る。 父は知り合いのおばさんたちを送迎するために車を変えたいらしい。 お風呂に入るように下着を用意して渡す。 脱衣所で汚れた下着を着てしまうことがあるので、部屋で着替えさせる。 お風呂から出てきたら、下着が後ろ前が逆になっている。 「最近の流行の着かたなんだね」といいながら、脱がせて直させる。 夜、東京の伯父から電話がある。 伯父も介護しながら生活していて、私の介護をねぎらってくれた。 「お互いあんまり頑張らないように頑張ろうね」と 変な挨拶して笑いあった。 夜11時過ぎ、父の部屋で誰かと話している声がする。 様子を見に行くと、父がTVを抱えていた。 「作品を提出しに来る人がいるんだよ」と。 TVの後ろにその人がいるそうで。 「今日は冷えてるね。お寺の階段上がったら冷えてたけど、 かなり冷えてるなぁ」と話題をそらしたら、 「そうだなぁ。寒いなぁ」とベッドに入った。 しばらくして起き出して犬の散歩に行こうと着替え出す。 「夕方散歩行ってくれたから、明日の朝に明るくなったらお願いね」 というと、また寝る。 散歩に行った事も覚えていられないようで。 行きたかったら好きにさせた方がいいのだろうけど。 ■散歩2004/1/13(火) 昼頃、父は「あちらの家に行くから」と出かけようとする。 「家はここしかないよ。他にはないんだけどな」というと考え込んでいる。 近くの公園に散歩に連れ出す。 左足を引きずるように歩くので、「音立てないように足をもっと上げるといいよ」と言うと、 最初の2歩くらいは音立てないのだけど、すぐ引きずる音がする。 犬のしつけは「ダメ」と言えるけど、痴呆症の老人に「ダメ」は禁物なんだなと思った。 「なんでこんな事も出来ないの?以前は出来たでしょう?」と言っても、 本人もなんで出来ないのかが解からない。どうやって以前出来たのかという記憶が欠落している。 そんな状況で「前にも言ったでしょう」というのは通用しない。 出来た事を誉めて、出来なかった事は「出来ないものだ」と家族が認識しないと。 ■行方不明2004/1/15(木) 朝、庭の落ち葉が貯まってたので父と掃き掃除をした。 その後、知り合いのおばさんと温泉で待ち合わせしてると自転車で出かけていった。 午前11時過ぎに、おばさんから「温泉で待っているんだけど、来ないのよ」と連絡が。 今朝は正常で普通に自転車も乗っていたので安心していたのに。 慌てて車で通りそうな道を探しに行く。 前回行ってしまった隣街の駅方面や、おばさんの家方面などをぐるぐる走ってみた。 温泉で待っているおばさんに「まだ見つからない」と報告。 おばさんも、「道をどこか間違えたのかもしれないし、家に戻って連絡待ってみる」と 心配してくれた。 もしかしたら別の温泉に行ってるかもしれないと思い、 一度家に戻ってから探しに行こうとしたら、おばさんから連絡が。 「帰ろうとして、土日だけやってるお蕎麦やさんの前を通ったら、お父さんいたよ。 いまから温泉に一緒に行くからね。」と。 父は温泉で待ち合わせたのに、なぜかその近くのお蕎麦屋さんでおばさんを待ってたらしい。 車で迎えに行こうとしたけど、自転車には乗れるだろうと判断して、 私も自転車で温泉に行く事にした。 広間でおばさんと並んで座りながら昼食を食べていた父は、普通の状態。 今朝、電話で「娘が風邪をひいて寝込んでいるので、自転車で行くよ」と父は言ったそうで。 「私は父と一緒に庭の掃除したんだけどなぁ」と伝えると、 「まともに見えてても実はボケてたんだねぇ」と二人でため息ついた。 行動を制限してしまうともっとボケが進行するだろうから、 様子みながら、やりたいことをやらせようということをおばさんと話した。 ついでに温泉に入って、帰りは父を監視しながら自転車で移動。 心配するほどでもないかなと思った矢先、交差点で横断歩道を使わない。 車とかバイクが走るように交差点の車道を渡っていく。 「自転車は横断歩道渡るんだよ」というと、「こっちの方が早い」と。 左折する交差点で赤信号で止まって待っている。 自動車を運転してる気分なんだろうな。 前回迷ったセブンイレブンで買い物をした後、家に帰る方角が解からないと言い出す。 これが原因か!と納得した。 その後絶対に曲がるはずのない場所で「ここは右に行くんか?」と言い出す。 周りにあるガソリンスタンドとか、団地とかを確認させて、 「この道は真直ぐ行くだけで曲がらないよ」と言い聞かせる。 自転車乗れる体力はあっても、記憶の欠落は進行しているようで。 ■誰かって2004/1/16(金) 二階の寝室で寝ていたら、一階からガタガタという音が。 「すみません、誰かいませんか?」という父の声。 「上に誰かいますか?すみません〜」と。 「どうしたの?」と降りて行くと、父は驚いた顔をして立っていた。 私が誰かは解からないようで。「起こさないでね」と言うと、 「誰かいるのかと思って探してた」なんて言うし。 連日の深夜まで続く心配で疲れて寝ていても安眠出来ない。 自分一人だと不安になって、家中を電気つけて歩き回る。 痴呆症の症状のひとつにあるけど、時間の認識と、空間認識と、人の認識が出来なくなっている。 ■電話出来ない2004/1/17(土) 父はフリーダイヤルの番号に電話したかったらしく、 携帯電話からかけたのにかからないと悩んでいた。 「携帯からはフリーダイヤルはかからないようになってるんだよ。家の電話からするといいかも」と 言った後にしばらくして。 「なんだか電話できないんだよ。やりかた教えて」と持ってきたのがTVのリモコン。 「これじゃ、チャンネルは変わるけど、電話は出来ないなぁ」と笑うと、 気付いたらしく、「あ、これじゃないなぁ」と笑っていた。 その後、家の電話でちゃんと連絡できたようで。 夜7時、「お昼食べに行こう」といいだす。 「夜の7時だよ〜」と言うと「あれ、そうか」と照れ笑いする。 ■食事中寝てしまう2004/1/18(日) 日曜で姉が来てくれた。父はどこかの場所の2階にいたと思い込んでいて、 その後1階に下りてきて、自転車がどこかに置きっぱなしになってるので、 取りに行くという話をしたらしい。 姉が「自転車ならあるよ?」と言うと、あることを確認して「あるなぁ」と言ってたそうで。 書道教室の使用していない机を壊したり、必要なさそうなものをゴミ袋に入れて整理する。 その後ホームセンターに買い物に行って、遅い昼食を取ろうとファミレスに行った。 父は食べている途中でいきなり「眠い」と言い出し、その場でうとうとしはじめる。 姉が車に連れてって、後部座席で寝かせてくれた。 「子供返りするっていうけど、まるで幼児みたいだよね」と姉といろいろ話した。 ■お酒飲んだらしい2004/1/19(月) 真夜中、お金をおろしに行くと出かけようとする。 「サイフにお金まだ入ってるでしょう。あんまり手元に大金持ってると、 泥棒さんに持って行かれちゃうぞ〜」と言うと、 「じゃあ、まだおろさなくていいか。昨日来たあの人にも言っておいたんだ」と。 昨日来たあの人とは誰?と思ったけど、また妄想の人物なんだろうと思って、 「まだお金おろさないって私からも言っておくよ」と寝かせた。 午後3時頃、父が赤い顔をしている。 熱でもあるのかなと思ったら、「お酒を飲んだんだ〜」って陽気。 普段からお酒を飲む習慣の無い人なので、ちょっとびっくりした。 好きなことを好きにさせようと思うので、「少し横になるといいよ」と寝かせる。 1時間後にすっきりした顔で起きてきた。 夜9時半頃、「あっちの教室に置いてある車を取りに行かなきゃ」と言い出す。 「ここしか家はないし、あっちの教室という場所なんて存在しないんだけどなぁ」と私が言うと、 「昨日泊った家はどこなんだ?」と混乱している。 「この部屋しか寝る場所はないんだけどなぁ。まぁ、脳がそう見せてたんだねぇ」 「自転車でみかも山に行かないと。ここから4キロくらいだし」って。 「うちからみかも山までは40キロ以上離れてるんだけどなぁ」 「そんな遠いんか?幼稚園の遠足で行ったんだ」と。妄想している。 「だいたいお父さんは幼稚園なんて行ってないし。よーく考えてみて。 さて、今年齢はいくつですか?」って質問したら、「7歳」だって。 無邪気に言うので噴出しちゃった。 ■警察のお世話に2004/1/20(火) 朝6時30分にゴミ出ししようとしたら、 父とちょび犬が散歩に出てる様子。 それが午前10時近くなっても帰ってこない。 どこかで迷ってるんじゃないかと、以前発見された隣街のそば屋さんや、 犬と散歩に行きそうな場所をあちこち探していた。 何度も家に戻って帰ってるかを確認したり。 12時過ぎに隣のお肉屋さんのお兄ちゃんが、「お父さんいたよ!」と教えてくれた。 警察から連絡あって、10キロくらい離れてる街の交番で保護してると。 お肉屋さんのお兄ちゃんは一緒に交番に引き取りに付いて来てくれた。 柵にちょび犬が大人しく繋がれていて、父はお茶を飲んでいた。 丁重にお詫びして、最初に通報してくれた理髪店の連絡先を教えていただく。 朝8時頃、理髪店の駐車場に停めておいた車をガタガタ触ってる父を、 店主が警察に通報。交番にて保護されたという状況。 父はその車が自分の車で、ここに置いて帰ってしまったと思い込んでいたそうで。 もともと乗ってた車とは全く違うタイプの車なのに、妄想の中では自分のだと。 ご挨拶に伺ったら、とても優しい方で「また見かけたら連絡しますよ」と。 完璧にボケて徘徊してたらしい。連れまわされた犬もへとへとになってた。 ■夜中と早朝に騒ぐ2004/1/22(水) 昨日、介護申請を市役所に姉が出してくれた。 市の職員が7日以内に電話で調査日の希望を聞くとのこと。 認定が出たら、その度合いによって受けられるサービスを利用しようということで、 父にもデイサービスが利用できるという話をした。 それを精神病院の隔離病棟に入れられると思い込んだらしく、 夜中に「そんなとこには行きたくない」と騒ぐ。 そういう場所じゃないと説明しても、納得しない。 最初からこういうサービスがあって、安心してお風呂に入ったり、ご飯食べたり、 お茶飲んだり出来るということを説明して一旦寝かせた。 早朝、二階の私たちが寝ている寝室までやってきて、 「話があるんだけど、昨日の話が」と騒ぐ。 部屋に戻してまた説明する。 寝不足で旦那も参った状態で仕事に出かけていった。 午後神経内科の先生にみてもらおうと病院へ連れて行く。 症状が介護度3〜4の重度になっているという診断。 寝る前に飲む薬を処方してもらう。 午後7時に飲ませてみたら、1時間後にしっかり起きてきた。 「新しい薬飲んだから、今日は安静にしてね」と再度寝かせる。 ■勘違い2004/1/23(金) 昨日の薬が効いたのか、珍しく朝まで熟睡したようで。 夜中に起きるかなと心配していたけど、朝すっきりした顔で起きてきた。 昼食を一緒に食べていたら、箸がきちんと使えていない。 挟む事が困難なのか、刺してしまう。 醤油を浸けて食べるものが一品あると、浸けなくてもいいものまで醤油に浸ける。 デザートのパイナップルを醤油に浸けたり。 食後に公園を歩いてみると、左足が弱いのか、傾いて歩いている。 引きずるような音がするので、「足を上げるように気をつけたほうがいいよ」と言うと、 最初だけ音をたてずに歩くけど、そのうちまた、ズリズリと音が。 午後、健康食品の勧誘の電話を受けたらしく、 電話の人が「いつお伺いすればいいですか?」というのを断ったとのこと。 それを夜8時になって、そろそろ寝たらと促すと、 「健康食品の電話を掛けてきた人が来るっていうから待ってる」と言い出す。 「また電話あったの?」と聞くと、「いや、昼間あっただけ」 記憶が欠落して、そのあと妄想で別の記憶にすりかわっている。 「断ったって私に言ってたから、その人は来ないよ」と寝かせた。 その後2時間起きに起き出して騒いでいる。 薬が効いたのは昨日だけだったんだなぁとがっかり。 ■猫が鳴いている2004/1/24(土) 午前中何をしていいのか解からないらしく、うろうろしてたかと思ったら、 自転車に乗ろうとしてたので、「一人で自転車乗らないように」と止める。 鍵をかけてあることも認識できない。 「池を壊す作業してね」と指示すると出来る。 書道教室の看板の板などを切断する作業をはじめたら、池を壊す作業をやめて、手伝いはじめる。 「猫が鳴いてるなぁ」と言うので、見回してみたけどどこにもいない。 「どこに猫がいるの?」と聞くと、犬小屋まで行って、なにかを拾っている。 手には枯葉が。「猫じゃなかった」と不思議そうな顔をした。 「また鳴いてるよ」というので、「もう一度確認してきたら?どこかにいるのかも」と言ってみると、 また枯葉を拾っている。父には枯葉が猫に見えてるらしい。 ■調査日決定2004/1/26(月) 介護認定の調査日が決まった。 現在出来ない事や、気になることを書き出しておく。 ・一人で外出や買い物ができない。 ・夜昼関係なく妄想を見る。 ・直前に話した内容が記憶されない。 ・電話に出てしまい、受け答えができない。(同居している人間をいないと言うなど) ・夜2時間毎起きて騒ぐ、うろつく。 ・都合の悪い状態になると、都合のいいように話を作る。 ・探し物が見つからないと盗られたといいだす。 ・家族が認識できない。(名前もわからなくなる) ・別の場所に家(または、教室)があると思い込んでいる。 ・住所・名前・年齢・電話番号が言えない。 ・文字が書けなくなっている(以前書けた漢字を忘れる、または、ぜんぜん違う字で書く) ・使い方が解からなくなった電気製品を分解もしくは破壊して修理しようとする。 ・誰かが来ると思い込んで待ちつづける。 ・服や下着を裏返し、または後ろ前逆に着る。 ・入浴するまえに新しい下着に替えさせないと、汚れた下着を着てしまう。 ・お腹がすぐに空く、または満腹感がないので、時間関係なしに食事をしてしまう。 ・歩行する時、左足をひきずる。 ・照明、暖房を管理できない。 ・醤油やごま油を取り違える。 ■夢と現実が2004/1/27(火) 昨日の夜、寝かせてから1時間後に起きてきた父は、 「前に住んでた家が火事になった夢を見た」と話していた。 その後また寝たなと思ったら、1時間後に書道の道具をバッグに詰めて、 「あちらの家に帰る」と言い出す。 また寝て起きた時に、「あっちの家が火事なんだよ」と騒ぎ出す。 「さっき、夢で見たっていってたよ」と言うと考え込んでいる。 「そういえば、ここは何度か来た事があるなぁ」と部屋を見回す。 教室に貼ってある張り紙を見て、「ここにもあっちの教室と同じモノが貼ってあるなぁ」と。 書道のバックを教室のどこかに置いてしまったらしく、 「道具の入ったバックがない。あれを持って行かなきゃ。」と探し出す。 私が発見して、「教室にあったよ」と渡すと、「じゃあ、帰るから」と。 「夜動くと危ないから、朝起きてからにすれば?」と言うとやっと寝てくれた。 夜中寝ている間の外出や、事故のことを考えると不安になる。 朝起きてすぐに父の部屋を確認したら、熟睡していた。ほっと胸をなでおろす。 夕食が終わった後、灯油のポンプが壊れたので買いに行く。 父はテレビを見ていたので、私だけ出掛けたのだけど。 家に戻ったら、庭の木が二本横だおしになってた。 推測すると夜七時頃、月あかりで昼間と思って切ったらしい。 しかもナタでえぐられた後があるので、近所に響き渡っただろうな。 夜に作業しちゃダメって言ってもやりそうな気配。 家のすぐ前にある街灯がやたら明るいので、その灯りも勘違いの原因なのかも。 ■調査2004/1/28(水) 早朝4時から父は昨日の続きの木を切る作業をしていた。 今日は介護認定の調査がある日。 どうやって、父に調査の事を伝えようかと担当の方に電話で相談したら、 「市で、お年よりの調査に廻ってると行きますから」と。 来てくれた調査の方が想像より若くて綺麗だったので、 父はすごくはりきってしまったようで。 「身体能力をちょっと見せてもらいますね」と歩いたり、足を上げたりするのに 頑張ってキビキビ動いていた。 その後、同意書にサインするのも、父が自分で書いた。 (文字間隔はすごかったけど) 一通り終わった後に、「ちょっとまだ別の話あるから、お父さんは木を切るの続けていて」と、 外で作業させてる間に、担当の方と実際はこうだという話をする。 育老日記をコピーしたものを渡して、最近はこんな状況だと説明する。 その後、知り合いのおばさんが心配して電話をくれた。 父の状態も良さそうなので、おばさんも誘って温泉に送迎することに。 知り合いらしい男性もいたのでほっとする。 父がお風呂に入っている間に、おばさんといろいろ話した。 おばさんは父より2歳年下なのに、以前父と電話で会話した最後に、 「おばちゃんも元気でね」と言われてびっくりしたと笑っていた。 先日の「年齢7歳」という話をしたら、おばさんも納得したようで。 帰宅して、切った木を袋に詰めようとしたら、 父が直径30cmある大きな木を切ろうとしている。 「それは残しておく木だから、切らないで欲しいなぁ」と言うと、 「切らないでいいんか?」と不思議そうな顔をする。 ■床屋と病院2004/1/29(木) 朝、また自転車の鍵がないと騒ぐ。 髪もヒゲも伸びていたので、近所の床屋に連れて行くことに。 「9時過ぎないと床屋さんが開いてないから、9時になったら行こうね」と言ったのに、 8時過ぎから、うろうろする。「まだ行かないんか?」って。 何時に何をするということが理解出来ないらしい。 行くとなったら今すぐ行かないと気が済まないようで。 昔馴染みの床屋さんでは、「今日は娘が近くの病院に来てたんだよ」なんて、 作り話してるし。床屋のおじさんとおばさんは父の症状見て、 「大変だろうけど、またおいでね。昔話するのもいいらしいから」と こっそり言ってくれた。 床屋から家に戻る途中で公園を歩く。 「今朝言ってた自転車は鍵ちゃんとあるからね。盗まれないように、 鍵かけてあるんだよ」と話すと、 「鍵があるならいいんだ。今乗るわけじゃないし」と。 午後1時30分過ぎに病院に行く。 先週の血液検査の結果と、市から「主治医意見書」の要請が来ているということで、 もう一度「ちょっとした質問」を確認のためにしましょうということに。 「今平成何年ですか?」「今日は何月何日?」「何曜日?」 時系列の問題がまったく的外れな答えになっている。 「ここはどこですか?」「野菜の名前を知ってるだけ言って」 「5つのものを覚えて、後で聞きますね」 とても簡単な内容を答えられない。以前受けた時より酷くなっているのを実感。 野菜の名前で、「きゅうり・・・すいか・・・うり・・・すいか・・・」 そんなにスイカが印象にあるのかな。 夜寝る前に飲む薬を1錠追加してもらった。 今日は効くといいなぁ。 家に戻って、紙に「6時になったら夕食を食べる」と書いたのに、 5時にご飯を食べてしまう。 時計を見たりテレビを見ても、正確な時間を言えなくなっていた。 夜8時に薬を飲ませて寝かせたけど、1時間後に起きてまた騒ぐ。 「家のリフォームのこと」「水まわりのこと」「池を壊すこと」 心配事があると、もう寝ていられないんだろうな。 話している最中に目がとろんとしてきたので、また寝かせる。 さて、次は何時間熟睡するんだろう? ■記憶の欠落2004/1/30(金) 昨日の夜10時に寝た後、朝方まで熟睡した父は、 朝すっきりした顔で起きてきた。 「犬のご飯をあげようと思ったんだけど、どこにもないんだ」と言い出す。 「棚にまだいっぱいあるからあげてね」と頼む。 昨日まで場所が解かっていた事が解からなくなっているようで。 父がお風呂に入っている間に、知り合いのおばさんと連絡を取る。 お昼から昔馴染みのグループで集まりがあるという事を、朝父に話してしまうと、 今すぐ出かけようとしてしまうので、直前まで内緒にしておこうということに。 連絡後連れて行くと、父はおばさんたちに会えたのが嬉しかったのか涙を浮かべていた。 感情の起伏がこれほど強くなるものなのかと思った。 数時間後迎えに行くと眠そうな顔をしていた。久しぶりで楽しかったようで。 夜8時に一度起きたら、「今日は2日か?」と言い出す。 「1月の30日だよ」と言うと、「2日にスキーに行くんだ。寒いだろうなぁ」と。 夢で見たのか、昔の記憶が出たのかは解からないけど、嬉しそうに話す。 「今日は久しぶりにおばさんたちに会えて楽しかったでしょう」と言ってみたら、 「楽しかった。みんな風邪ひいたり、あちこち痛いっていうんだよ」と笑っていた。 ■家に帰る2004/1/31(土) 昼間から妄想の人物と会話したという父は、 午後4時半に夕食を食べ始める。時間の感覚がおかしい。 午後6時あたりが暗くなった頃、「家に帰るね」と出て行こうとする。 「じゃあ、帰る家まで送ってあげる」と一緒に外に出ると、 「うちと同じ灯油があるなぁ。。自転車は誰がこっちに乗ってきたんだ?」と不思議そう。 駐車場を歩いて道路に出たとたん振り返って、「あれ?うちだ」と引き返す。 ここが家だって認識したみたい。 教室を見たり、自分の部屋を見て、「さっきは初めて来た家みたいだったんだよ」と。 寝る前に飲む薬を飲ませて、午後7時に寝かせる。 1時間後起きてきて、「さっきは変だったな」と言い出すので、正気なのかと思ったら、 「昨日寝ていた部屋にサイフを忘れて来ちゃったんだよ」とか、 「飛行機に乗る前に探さないと」とか。 去年の北海道に旅行した時の夢でも見たかな? 「自分の家が解からなくなったり、変な行動したらすまない」と言うので、 「大丈夫だよ〜。なんかあっても、おねぇちゃんも私もいるんだから安心してね」 と頭をなでてみた。 「解からなくなって、人の物を自分の物だと思って捕まったりしたら大変だな」なんていうから、 記憶がおかしいという認識はあるみたい。 ■誰か解からない2004/2/1(日) 父は姉に「お子さんはいくつなんですか?」と質問していたそうで。 今日の父には私も姉も、どこかの誰かで今日初めて会った人らしい。 北海道の滝川にいると思い込んでいた。 脳の活性化になるかなとカラオケに連れて行ってみる。 以前歌えた曲が画面を見ながら歌詞を読むという事ができない。 かなり進行していると感じる。 夕ご飯の準備していたら、どんぶりにご飯を山盛りにしている。 「ご飯盛ってくれたんだ。ありがとね」とテーブルを見ると、 山盛りのご飯が3杯。「こんなに食べるの?」と聞くと、 「おばさんやおじさんが来るっていうから」 どんな内容の妄想をみているのか聞けたらいいのになぁ。 夜9時半に起きだして来た父は、「役所に行ってくる」と言い出す。 「土地の登記簿と、書いてある内容を確認したい」と。 「父さん(私の祖父のこと)がこの土地を買うときに、 誰かに借金したかも。兄貴(私の伯父)の名前になってたりするかも」 「それは無いと思うけど、この土地はお父さんが自分で頑張って、 買った土地だし、おじいちゃんも伯父さんもこの土地には関係してないよ」というと、 「保証人になって、借金のカタに抵当に入っているかも」と妄想する。 まだまだ難しい内容の妄想が出来るんだなと思いつつ、 どこからそんな考えが出るんだろうと思ったり。 1時間後、今度は「布団の中に赤ちゃんが寝ているんだ」と騒ぎ出す。 細長い首まくらを脇に抱えて寝ていたらしく、父にはそれが生きてるように思えたようで。 その後「犬の散歩に行く」とか理由をつけては起きだしてうろつく。 ■TV見て妄想2004/2/2(月) 父が「家の庭で事故だ!大変だ!」と血相変えていた。 テレビで見た事故を今家で起きたと騒いでいたようで。 映画のパーティの場面見たら、その中に自分がいると思い込んだり。 どこかの土地を競売にかけて、自分が金を出したと思い込んでいる。 知り合いの亡くなったおばさんの名義で「その土地を買ったんだ」と。 「おばさんが亡くなった段階で無効になっちゃったね」というと納得して、 「そうだなぁ。もう権利ないか」と言い出す。 今いる場所がどこかも解らない。昼間からここまで妄想するのは初めてかも。 夕方犬の散歩と買い物に連れて行く。 やっぱり行動がおかしい。周りの人にじろじろ見られるけど、気にしないことにする。 午後7時に寝て、その後9時に一度起きてトイレに行った後、珍しくすんなり寝てくれた。 ■薄着でいなくなる2004/2/3(火) 朝、ちょっと目を離したすきに姿が見えなくなった。 部屋やトイレを探したけどいない。 いつも履いてる靴が無いので外出したようで。 外にあわてて出て見回すと近くの交差点に父が立っていた。 「お父さん、どこに行くの?」と聞くと、「お金おろしに行ってくる」と。 上着も着ないで薄着のままだった。 「お金なら、この前おろしたのがあるから、まだ大丈夫だよ。寒いから家に戻ろう」と、 父の背中を抱えるようにして家に戻る。 「おろしかたを練習しようと思ったんだ」と理由を言っていた。 外出するとか妄想するにはそれなりの理由が本人にはあるようで。 家に戻ったらちょっと正常に戻ったので、知り合いのおばさんに連絡して、 「温泉に行きませんか?送迎しますから」と誘ってみる。 環境が変わると刺激になるのか、父はおばさんと会話を楽しんだ。 夕方家に戻って「なにしていいか解からない」というので、 「腕が落ちないように、書道のお手本書いておくといいかも」と文字を書かせる。 水・氷・永などの文字が今日は書けた。 その後犬の散歩に連れ出す。小雨なので傘をさして歩く。 ■また家に帰る2004/2/4(水) 今日の父は昼間落ち着いた状態だったので、安心していたら、 夜7時15分頃、「家に帰る」と言い出す。 「ここの旦那さんがいたんだけど、どこ行っちゃったかな? 犬も連れて帰らないと。子供達に帰るって言わなくちゃ」と支離滅裂な話をする。 「うちとそっくり同じモノがここにもあるんだよ」とあたりを見回す。 「ここはお父さんの家だよ?違う家に来てるような気がする?」と聞いてみると、 「そんな意地悪いうなよ。違う家なのに、ここが自分の家だっていわれても、 違うんだから。助けてくれよぅ。」と泣きそうな勢い。 「じゃあ送って行くから、あったかい服装して帰ろうね」と父に上着を着せる。 外に出ると、犬を引っ張って行こうとするので、「犬はあとで連れていくから」と 父と駐車場を通って通りに出る。 「家はどっちなの?」というと、交差点方向を指差す。 「じゃあ、行ってみようか」と歩き出そうとしたら、まわりを見回している。 振り返って、「あれ?ここが家だ」と気付く。 「じゃあ、家に帰ろう」と引き返すと、「さっきまで違ってたのに不思議だ」と笑い出す。 「そうだねぇ。不思議なこともあるんだねぇ」と寝かす。 そしたら、「ご迷惑お掛けしました。奥さんによろしく」だって。 この前のパターンと一緒なので、なんとなく対処方法が解かってきた。 ■掛け軸2004/2/5(木) 朝食後、父はやることが無くてうろうろしてるようだったので、 「教室の片付けとか、腕落ちないように作品書くとかするといいかも」と言ってみると、 棚に置いてある掛け軸の整理をはじめた。 「書いた人がいれば聞けるのになぁ」とつぶやくので、「どうしたの?」と聞いてみる。 「全部の掛け軸に俺の名前が書いてあるんだよ。困っちゃったな。誰が書いたんだろう」って。 そりゃ、お父さんが自分で書いた作品だから、自分の名前が書いてあるのはあたりまえだろうなぁと、 思ったけど、くちに出さなかった。 「作品と一緒に写真があるんだけど、俺も写ってるんだよ。なんでだろう?」 書いた作品が他人が書いたように感じたり、写真に写ってる自分が不思議に思えたり。 記憶が欠落したり、妄想してしまうとこんな症状も出るんだな。 昼食を取りながら、キョロキョロとあたりを見回してた。 「そこにいる人がおしっこしてるんだよ」と嫌そうな顔をする。 「誰かいたように見えたんだ。確認してみたら?」と言うと、 座布団の臭い嗅いだり、床をあちこち触ってみている。「変だなぁ。いたんだけど」と。 午後2時、ちょっと目を離したすきに家を出る音がする。 慌てて追いかけたら、交差点の手前に大きなノコギリを持った父が。 「どこに行くの?」と聞くと、「家の裏の木を切ってくる」って。 「あそこの木は切っちゃいけないみたいだから、家に戻ろう」と誘導する。 隣家と接している場所に生えてる木を切りたかったようで。 ノコギリをだらんと持って歩いている姿は、見るからに危ない人って感じだった。 道具を隠してしまうことにしないと、夜中でも切りそう。 夜一度寝ると、1時間ごとに起きだす。 11時半に冷蔵庫を開けているので、「お腹すいたの?」と聞くと、 「朝ご飯食べるんだよ」と。時間確認させて、また寝かせる。 ■ゴミ袋に挨拶2004/2/6(金) 今朝の父は朝ご飯食べたのに食べてないと言うし、 お風呂準備してないのに、「入れって言われた」と下着を持ってうろうろする。 燃えるゴミの日なので、一緒にゴミを袋に集めて出しにいったら、 すでに出てるゴミに「おはようございます、おはようございます」って挨拶してる。 昼頃「昨日来た人にお金預けた」とか、「証文がどこか行った」とか探している。 もしも何かあったらどうしようとか、行方不明にならないだろうかと、 私が神経質になりすぎていたようで。 父が騒ぐ度に私が疲れてイライラしてる気分を見せてしまうと、 そのイライラを父は敏感に感じ取ってしまうのかも。 思い切って「留守番お願いね」と出掛けてみた。 夕方戻ってみたらちゃんと家にいた。 夕食後、また「お金をどこかに置いたはずなんだ」と探していたので、 「頑張って探してね」とほっといた。 否定したり、イライラしながら様子みていても症状が良くなる訳じゃなので。 ■好きにさせる2004/2/7(土) 朝、自転車をガタガタ動かしていた。 「鍵がないんだよ。これじゃ帰れない」と言い出す。 書道教室に机を並べて、「書き終わったら持ってきなさい」と 父は誰もいない空間に向かって話をしていた。 妄想の中で、子供達に書道を教えているらしい。 なにかやってても気にしない事にした。 おかしな行動するのが当たり前だと思って、好きにさせる。 出来ることだけ誉めてあげよう。 夜中12時前に暗闇の中で父が独り言を延々としている。 ほっとこうと思ったけど、30分くらい何かを喋っているので様子を見に行くと、 薄着のまま外に立っていたので、「何してるんかな?」と声をかけてみた。 「あれ?よくここが解かったな?」と不思議そうな表情。 父はどこかに出掛けてて、今から自分の家に帰ろうと思ってたらしい。 「上に何か着ないと寒いでしょ〜。今日はここにお泊りだよ」と ベットに連れて行って寝かせた。 「今日はここに泊りかぁ。あったかいなぁ」と嬉しそう。 ■解からなくなる2004/2/8(日) 早朝、父は二階で寝ている私を起こしに来たが、 無視して寝ていた。あきらめたのかしばらくしたら静かになった。 昼間、教室の机にウエハースのお菓子をあちこち置いて、 書道に来てる子供たちにあげたそうで。妄想のなかで、教えているらしい。 夜7時、「布団がどこか解からない」とうろつく。 目の前にベッドがあっても、そこがいつも寝ている場所という感覚が無くなっているようで。 9時、トイレで全裸になった父は居間に入ってきて、お風呂を探していた。 その後、「家に帰る」というので、暖かい服装をさせて外に出る。 教室を見た途端、「家だ」と認識する。 自分の家が違う場所に見えるということが日常になってきた。 ■覚えていること2004/2/9(月) 父は昨日お風呂を勘違いしていたことを思い出したらしく、 「お風呂の場所が解からなかったんだよなぁ」と言っていた。 恥ずかしかった事や、自分の伝えたい事が伝わらなかったという事は記憶にあるようで。 昼間、「あっちの教室に荷物運ばなきゃ」と言い出す。 自宅にいながら、自宅に感じない感覚というのは辛いだろうな。 「自転車屋さんに鍵が開かないので修理に行ってくる」と言い出すので、 「鍵は乗る時に付けるように外してあるだけだから心配しないで」と納得させる。 自転車に乗りたがるのは運動不足だと思ってるようなので、散歩に連れ出す。 夜10時半に朝だと思い込んでご飯をよそって食べていた。 ゴミの日だからと袋にゴミを集めている。分別が出来ないので、明日の朝分けることになりそう。 「まだ夜中だから、寝ておいたほうがいいよ」と寝かせる。 ■行方不明2004/2/10(火) 朝8時30分、いつのまにか父がいないことに気付く。 TVも暖房も電気もつけっぱなしのまま。 外に出てあたりを見回しても姿が見えない。 上着を確認したら、着ていないようで。足元はサンダル履きらしい。 セーターを着ていたのは見ている。帽子は持って行かなかった。 もしも警察から連絡あった場合に備えて、どんな服装かというのをメモした。 前回のように、隣の肉屋さんに連絡があるかもと思って協力してもらおうと交差点まで行ったら、 通りの向こうから父が歩いてくるのが見えた。 「お帰り〜。寒かったでしょ。どこ行って来たの?」と声を掛けてみた。 「運動の為に散歩してきたんだ」と。 「今度散歩行く時は誘ってね。」と言うと笑っていた。 本人は行方不明になって家族が探していると思っていないから、 心配した分だけ疲れる。 お昼頃、父を残して用事を済ませようと出掛けて来た。 戻ったら、父は服を裏返しに着ている。 「お風呂入ろうとしたら、混んでて入れなかった」と言うので、脱衣所を確認しに行く。 カゴに上着と下着が置いてあったので、服を全部脱いで入ろうとしたのかな。 「お風呂入れって言われたから」と。妄想の中で誰かに言われたらしい。 ■車を買ったと思い込む2004/2/11(水) 父は「車を買ったんだ」と妄想している。だんだん慣れて来た。 「車買ったんだ。もう運転はしないって約束だから、返品してきてね」というと、 「ないと、どこにも行けないじゃないか」と考え込んでいる。 「もう車も自転車も運転出来なくなったんだから、あきらめるしかないね。 公共の交通機関を使うことも出来ないでしょ。必要な時は送り迎えしてあげるから、 車は返品してきてね」とやんわりと言ってみる。 「なにも出来なくなったら、自殺するしかないな」と言い出すので、 「そっかー、じゃあ私もお父さんの後追って自殺するよ」と笑顔で言ってみた。 「それはダメだよ。お前まで死ぬ事はないんだから」と慌てた様子。 「じゃあ、楽しく生きる工夫しようよ」 という会話をしていたら、TVでイラクの危険地帯の番組を見て、 「結構品物が溢れてるなぁ」と話題がころっと変わる。 5分前に「自殺する」なんて物騒な話をしてたことも忘れているようで。 夜9時頃起き出して来た父は、「ここは初めて来たとこなんだよ」と。 「うん。今日はここにお泊りなんだよ。暖かくして寝てね」と言ったら、 「あれ、何回か来たことあるな?」と言い出す。 「そうだね。前に来たのかもしれないね、おやすみ〜」 否定しても埒があかないので、肯定すれば納得しちゃうみたい。 ■自転車の修理2004/2/12(木) 父は自転車をガチャガチャと音を立ててなにかしていた。 今日は気にしないようにしようとほったらかしにしてみた。 夕方お隣の奥さんと立ち話する機会があったので、 「今日おとうさんが、自転車屋さんにいたわよ」と教えてくれた。 ご近所の自転車店に父は鍵のかかったままの自転車を持って行って、修理してもらったらしい。 後輪に鍵がかかっているから、抱えて押して行ったようで。 「自転車の修理してきたの?」と聞くと、 父は「行って来たよ。この鍵は固いんで、外れないらしいんだ」と。 自転車屋さんも痴呆の症状を理解してくれたのか、鍵をそのままに(壊さずに)してくれてた。 ちゃんと自宅に戻って来れた事に、ほっとする。 まだ、正常な時もあるんだから、心配しすぎも良くない事なんだなと思った。 夜8時、父はトイレに何かを抱えて入ろうとするので見てみたら、 上着・セーター・枕だった。「ここはトイレだよ?」と教えると、 「2階から降りて来たんで、こっちの部屋に行かなきゃ」と言う。 部屋に連れて行って寝かせる。今日もどこかに泊ってると思っているらしい。 ■家に帰る2004/2/13(金) 午後2時半頃、「じゃあ、元気でね」と言いながら父は家を出た。 「どこに行くの?」「家に帰るよ」と。 自由にしてあげようと後姿を監視していたら、どんどん南に歩いていく。 急いで家に戻って車を出して追跡した。 「あれ、お父さん。こんなとこにいたんだ。乗っていく?」とドアを開けると、 父は車に乗り込んできた。 「家はどこなの?」と聞くと、「次の信号を右に曲がってくれ」と言うので、 父の道案内通りに車を走らせる。 隣町を通り越して、かなり先まで来た時に、「ここを左に曲がって」と指示したのが、 書道の集まりのおばさんたちが住んでいる町だった。 「忘年会とか新年会でここのスナックに来たよね」と話題を振ったら、 「皆なかなか集まらなくなってなぁ」と寂しそう。 途中で以前行ったことのある理容店が目に入ったので、 「髪の毛と鼻毛が伸びてるから、切ってもらおうよ」と入った。 髪を切ったり、ヒゲを剃ってもらっている間、気持ち良さそうに寝ている。 終わったときには、「こんなに綺麗にしてもらって」と涙ぐむ。 そのまま家に連れ帰った。 一人で徘徊したとしたら、10キロは歩いて来ちゃうかも。 また夜起きだして、「ここは前も来た事あるなぁ」と徘徊する。 ■何度もご飯2004/2/14(土) 昼間妄想を見るのが日常になってきた。 今日もどこかに来ていて、家に帰らなきゃと思ってるらしい。 時間ごとに正常だったり、ボケていたり。 「今日はお腹が痛くてトイレ行って出したらすっきりしたんだよ」というので、 「ご飯食べたあとに、またご飯食べたりして、食べ過ぎだったからじゃない? 今はお腹痛くないの?大丈夫?」と聞いてみると、 「ぜんぜん痛くないんだよ。どこも悪いとこはないし」 (悪いのは脳だけだなぁと思うのを言葉には出さなかった) 「あっちの部屋にお母さんがいるんだよ」と言いながら、何かを探している。 父が言う「お母さん」とは誰の事なんだろう。 私の母(父の奥さん)は約30年前に亡くなっている。 父の記憶の中で母は生きているんだろうな。 鍵の置き場をすべて移動して、目に付く所からなくしてしまった。 夜10時過ぎ、「免許の試験に合格したんだ」と興奮した様子。 「良かったね。合格したんだ〜」と喜んだ演技した。 寝かせた後、辛くて涙が止まらなかった。 ■混乱2004/2/15(日) 朝起きるとドアの向こうに父がぼーっと立っている。 「昨日免許の試験受かったから、車を買ったんだけど、電話番号が解からない」と。 「そっか。お父さんは車の運転はもうしないって、おじさん達に誓ったよね。 だから、送り迎えしてあげるから、車は今あるやつでいいんだよ」と説明した。 前日の妄想が現実のような記憶になってしまっている。 そのうち訳のわからない事をブツブツいいながら部屋を徘徊する。 「車がないとどこにも行けないじゃないか。警察に連絡して来てもらう」って。 どういう思考回路がつながると、こうなるんだろう。 昼頃姉が来てくれて、3人で外に出る。 食事の後、父がトイレに行くのを付いて行く。 大きな公園を散歩させて、樹木の名前のプレートを読ませた。 家に戻って、姉が持ってきてくれた「馬油」をかかとの割れている場所につける。 自分だと出来ないだろうと耳掃除もしてみた。数年分の垢が取れる。 普通に出来ていたことが出来なくなってることを再認識した。 ■5分前のことを忘れる2004/2/16(月) 朝入浴後にまた「馬油」をかかとにつけてマッサージした。 ビニール袋を履かせて、その上から靴下も履かせる。 しばらく置いておくと油の浸透がいいみたい。 その後5分くらい離れた場所にいたら、いきなり「おはよう」と挨拶する。 目が半眼になっているので、妄想がはじまったらしい。 さっきまで正常だったのに。 午後散歩に連れ出す。近くの公園を歩いていたら、 「岩舟(父の実家)に書道の道具を送らないと」と変な事を言う。 帰りに寄った店で珈琲を飲もうとしたら、いきなりほお杖をついて寝はじめた。 そのまま数分寝かせる。本人は数時間寝た気分だったらしい。 家に戻ると自転車の鍵がないというので一緒に探す。 (私が隠した鍵は以前の鍵で、新しく交換した方は父が持っていたらしい) 仏壇の下に入ってるのを発見。父は「そんな所に誰が入れたんだろう?」と。 (お父さんしかいません)と言いたいのを我慢した。 夜9時半、父はあちこちのドアを開けたり閉めたりしている。 「皆が集まって来てるんだよ。」と楽しそうな妄想を見ているよう。 ■幻聴2004/2/17(火) 朝お風呂に入った後に、「今日温泉行かないか?」というので、 午後に近くの温泉に連れて行く。 顔見知りの人達がいて、父をカラオケやダンスをしてるところに連れて行ってくれたので、 預けて温泉に入って来る。少しでも父と離れることが出来るだけで正直ほっとする。 3時半に待ち合わせして帰宅。 今日は大丈夫かなと思い、隣の肉屋さんに買い物に行って帰ってみると、 いきなり父はカセットコンロを取り出していた。 鍋にはラーメンの麺が。そこにお湯と醤油を入れている。 目が半眼になっていて、ぼーっとしている様子。 火を使うのは危ないとガスボンベは外しておいたのだけど、 ガスボンベの場所に「ガラスクリーナー」のボンベが無理やり押し込められてた。 火が着くわけじゃないのだけど、肝を冷やした。 「ラーメン作ろうとしたの?さっきお蕎麦食べたのに」と言うと、 「お前が食べるかと思って」と。 温泉に行く前に昼食は食べていたのだけど待ち合わせの間にお蕎麦を一人で食べたらしく、 私に麺ものを食べさせたかったらしい。 コンロを目につかない所に移動させようかと思ったけど、 ガスも入ってないし、取り上げたら騒ぐだろうなと思い、そのまま置くことに。 子供の時、父の作ったラーメンが美味しかったと思い出した。 「火を使う時は一緒にやろうね」と言ったら、「猫がないてるんだよ」と話題をそらす。 「ほら、そこにいるだろう。まるまってて。ないてるんだよ」と幻聴を聴いてる様子。 8時頃就寝しても1時間毎に起きだして、何かごそごそしている。 深夜12時に上着を着て「温泉に行って来る」と言い出す。 昼間と間違っているようで。「真夜中だから、行ってもやってないよ」と寝かしつける。 ■温泉2004/2/18(水) 父の携帯の発信記録に姉宛があったので聞いてみた。 朝姉に電話して、温泉に行きたいから送迎してくれと頼んだらしい。 「昨日来てた人が今日温泉に行こうというから」と妄想を現実と思っている。 言動がおかしいけれど、慣れた温泉と顔見知りも多いので連れて行くことに。 住所氏名と連絡先と迎えに行く時間を紙に書いて、父のバックに入れる。 夕方迎えに行くと、2時間も前から待っていたそうで。 「ゆっくり遊んでくればいいのに」と言ってみると、 「なんだかカラオケの機械が壊れたらしくてテレビが映らなかったんだよ」と。 約束をすると、時間の感覚がおかしくなってるので、 その時間まで待つということが出来なくなっている。 (次の日の約束をすると前日の真夜中から行こうとする行動が以前からみられていた) ■介護度22004/2/19(木) 認定審査の結果が郵送されてきた。 介護度2。予想より低い結果だったけれど、ひとまずほっとする。 デイサービスの相談をするために介護施設のケアマネージャーさんにアポを取って、 来週の月曜日の午後に父を連れて行くことにした。 介護度2だと、週3回の利用が可能とか。 状態みて再度申請だすかどうかも相談しましょうということに。 夕方主治医の先生に父の診断をしてもらうついでに介護認定結果を報告した。 「2かぁ。3くらいは行くと思ったのになぁ」と先生もタメイキ。 「また主治医意見書が必要になったら出しますからね」と。 普段服用している薬は継続するということで、診察室を出る。 ■記憶が混乱する2004/2/20(金) 父の妄想と混乱に家族が慣れて来たせいか、 言動が少し変でも「またいつもの事」と思えるようになった。 今日は教室にある書道の道具を「あっち」から運んで来たと思い込んでいる。 父の言う「あっち」とは実家のある場所らしく、そこで教室などしたことないのに。 記憶の混乱で、自宅は40キロも離れた場所にあって、 今いる場所はどこか解からない知らない場所らしい。 「書道用の半紙や色紙などの紙類をフリーマーケットに出して車を買うんだ」と言う。 TVで詐欺の話題を見て、自分が詐欺にあったと思い込む。 「北海道に行ってた5年間に、貯金を全部騙し取られたんだよ」と。 「それは大変だったねぇ」と相手する。 深夜1時頃、「うちに帰るから」と出かけようとするので、 「今日はここにお泊りだよ」と言うと納得して寝てくれた。 ■前日の妄想2004/2/21(土) 最近の傾向は、前日に見た妄想を次の日に持ち越すことが多い。 今朝は「お金を預けたのがちゃんと入ってるか見てもらう」と言いながら、 預金通帳の繰越印のある使用済み通帳の束を持って出かけようとしていた。 今後騒ぐ原因になりそうだったので、その必要ない通帳の束を廃棄する。 妄想を見ているときに肯定してしまうと、それが記憶に残って混乱させるような感じ。 次の日に起こる混乱を考えると、ある程度事実を伝える方がいいのだろうか? 事実が理解出来ないのだから、否定しても納得しないし。 妄想で混乱した話は肯定して、納得できるような話を作る。 (家に帰るというときは付いて行くか、ここに泊りというふうに) 父の「何をしたいか」を理解するように努力する。 妄想が起こる原因を取り除く。(今日の使用済み通帳を処分するなど) あとは、相手にしない。(これが出来ないんだよね) 話題をそらす。(出かけようとしてる所で、庭の掃除をはじめて、手伝ってもらうなど) 正直しんどい。 夜10時頃、書道教室から声がする。 センサー付きの小さな灯りだけがついている中、父が机を覗き込んでいる。 「子供達に書道を教えている」らしい。 周りが暗いということにも気付かない様子。 ■車を買ったと言う2004/2/22(日) 「車買ったんだよ。三菱の軽なんだ。お金が必要だから、言っておいて」 父は車を買ったと思い込んでいる。 「そか。じゃあ、言っておくね」と対応したら、納得したみたい。 夜一度寝て、起きだす間隔が短くなってきた。 今日は20分毎に起きて妄想を見ている様子。 相変わらず、「お財布がない」とか、「お金払ってこなきゃ」とか。 11時過ぎから夜中1時までの2時間、暗闇の中で誰かと会話している。 相手がまるでいるような話ぶりだった。 1時を過ぎた頃にイビキをかきだして眠ったので、疲れたらしい。 ■デイサービス契約2004/2/23(月) 午後2時、デイサービスでお世話になる予定の施設に父を連れて行く。 お楽しみの時間だったので、カラオケをやっている場所に父をお願いして、 ケアマネージャーさんと内容の確認と契約をする。 痴呆症専門で少人数でみてもらえる場所も利用出来るようにした。 予定しているショートステイも空きを確認してもらい申し込む。 介護度2なので週3回。月・水・土の利用を計画してもらう。 デイサービスとショートステイの契約書と同意書・誓約書を作成提出。 計画書がスムーズに作成されれば、来週くらいから利用可能とのこと。 同年代の人とカラオケを楽しんだ父は嬉しそうだった。 ■ケアマネージャー決まる2004/2/24(火) 施設のケアマネージャーさんが手いっぱいということで、 外部の方を紹介してもらう事に。 昨日から今日にかけて、あちこち探して頂いたようで。 ようやくケアマネージャーさんを決めることが出来た。 電話連絡で26日(木)に家に来て契約をする事まで決まった。 今後の計画や変更などは、その人を通して行うことになりそう。 ■警察から連絡2004/2/25(水) 朝起きたら父がいなかった。家の中を捜してもいないので、姉に連絡した。 「今石橋の警察から連絡あって、迎えに行くところだから」と。 父は朝4時頃歩き出して、隣町の警察に「タクシーを呼んで欲しい」と自分から行ったそうで。 薄着で歩き回ってどこかでころんだらしく汚れが服に付いていた。 自分から来たということで調書は取りませんと帰してくれたのだとか。 首から住所氏名連絡場所の書いた札を下げていたので連絡が姉にいったようで。 生年月日も書いてあるといいということで、書き足してまた首から下げさせる。 家に戻ってから2時間ほど熟睡していた。 夜8時、カバンを抱えて帽子をかぶってどこかに行こうとしているのを発見。 「どこかに行くの?夜は暗いから危ないよ。」と言うと、 「玄関に靴があるか見ようと思って」と。 部屋に戻ってベッドに横になったとたん熟睡する。 REM睡眠の状態になって眼球が動いてるので、夢を見ながら行動していたようで。 ■ケアマネさんと契約2004/2/26(木) 午後3時、ケアマネージャーさんとの契約をした。 若くてかわいいケアマネのEさんは、父に優しく話し掛けてくれた。 父もなんだか嬉しそうで、昔の作品を見せたりしていた。 数日前から腰と背中を痛めていた父は途中トイレから戻ると、 「さっきいた人に背中を押して貰ったんだ」と妄想していた。 Eさんにも昼間から妄想を見るという現実を見てもらえて良かったかも。 外に出て父のいない所で症状の簡単な説明をする。 今後施設利用や認定更新などはケアマネさんを通じてお願いする事になる。 知識も豊富なEさんは頼りになってくれそうで有難い。 ちょっとだけ肩の荷が下りた気分。 夜10時過ぎ。父がガタガタ何かをしている。 大きな音がしたので見に行ったら、「新しく始める人がいるのでお手本書かないと」と。 夢の内容が現実だと思い込んでいるらしい。 書道するのかなと様子を見ていたら、またベッドに横になって寝てしまった。 ■ほっとする瞬間2004/2/27(金) 朝起きて父の部屋の電気が付いているのに、まだ寝ているようで。 目が半眼でクチを半開きにしている表情で寝ているのを見て、 息をしていないような感じがした。 ちゃんと呼吸をしているのを確認してほっとする。 「背中の痛いのが治ったから良く眠れた」と言いながら起きて来た父は、 身体を動かして背中が痛いことに気付くと急に両手をついて座り込んだ。 午後、一緒に買い物に連れて行って帰宅後30分くらい一人にしておいた。 「お茶でも飲もうか?」と声かけたら「今買い物してきたんだよ」と私に言う。 父は私以外の人と出かけたと思っているらしい。 その後、いきなりお札の金を「いつも世話になってるお礼だから」と渡された。 父の見ていない所でサイフに戻しておく。 夜9時頃、「家に帰るから送って」と言い出す。 旦那が帰宅して「今日はどうだった?毎日お疲れさん」とねぎらいの言葉をかけてくれた。 話を聞いてくれるだけでもありがたい。 ■いなくなる2004/2/28(土) 朝父をお風呂に入れて、着替えさせた。 腰や背中がまだ痛むというので、「運動とかしないで、書き物していたら?」と言った5分後。 9時30分に父がいなくなる。教室や部屋を見てもどこにもいない。 靴を確認したら一足無くなっているので、外に出たようで。 あたりを見回してもどこにも姿がない。 車で以前歩いて行ってしまった方向を探し回る。 もしかして以前行ったことのある整形外科に行ってるかもしれないと思って、 受付に来てるかどうか確認する。そこにもいない。 近くの公園も確認してみたけど、いなかった。 約2時間後、父が家に戻って来た。 線路を越えて、田んぼ道まで2キロ近く歩いて、川の遊歩道で一休みして帰って来たそうで。 「田んぼまで行って散歩してきたら、黒い子犬が付いて来ちゃってさ」と嬉しそう。 「かわいいだろう。こんな小さいのに、あちこち隠れながら付いて来たんだよ」と。 指差す先には何もいない。 「どこに犬がいるの?う〜ん。私には見えないんだけど。」というと、 「あれ?いなくなった。今までいたのに、消えちゃったよ」と驚く。 急に現実の世界に戻って来た父は「不思議なこともあるんだなぁ」と笑っていた。 ■苛立つ2004/2/29(日) 午前中はいつもの妄想が出ていた。 「岩船の家に帰らないと」と実家に行こうとして自転車をガタガタさせている。 乗れないように鍵をかけているので「自転車屋さんで使えるように修理してもらう」と、 抱えて持って行こうとする。 隣に置いてある自転車と使わなくなった犬の首輪でつないでしまった。 移動させることが出来ない事に苛立つようで、「警察を呼ぶ」なんて言い出す。 首輪は普通なら簡単に外せるタイプなのだけれど、それを外す事が出来ない。 2度も姉に電話をして現状を訴えていたらしい。 午後姉が様子を見に来てくれた。姉が来たとたん、さっきまで苛立ってた事を忘れてしまう。 夜牛久の二人の伯父から電話があった。父の状態と私の事も心配してくれた。 「頑張らないように頑張ってね」っていうのが東京の伯父と同じ励ましだったので、嬉しかった。 真っ暗な部屋から父の話し声が聞こえた。どこかでお楽しみ会に参加していると思っている。 半眼で夢を見ているようで、「踊りの稽古しないと。そっちは大丈夫か?」と誰かに問い掛けている。 暗闇のおしゃべりは2時間以上も続いている。 |