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育老日記・痴呆の症状と向き合う備忘録



■痴呆症の始まり2003/7/5(土)
 伯父が亡くなったという連絡がショックの発端だった。
運転させるのは危ないということで、乗せて行く。
■通夜・葬儀2003/7/6(日)
 伯父の通夜を葬儀会場でするというので、姉と待ち合わせたが、
兄弟と話をすると書置きして、父は先に実家へ自分で運転して出かけてしまった。
父の車に残る傷があまりにも多いことに伯父たちが運転をしないよう説得。
遺族代表の挨拶も下の伯父に任せないと危ない状態。
思考が停止しているようで、夢をみているような表情。
通夜式が終わって、葬儀会場の遺族用部屋に一晩泊まりこむ。
夜中に「書道教室の予定表作らなきゃ」と起き出す。
トイレの場所も解らないので誰かがついていかないとトイレに行けない。
約2時間ごとに起き出してはうろうろと徘徊する。
私と姉は心配で一睡も出来なかった。
伯父の死のショックと、通夜・葬儀の式の何度も繰り返される焼香と読経に混乱している。
葬儀の直前「帰ろう」と言い出す。
現在の状況が把握できてない。
葬儀の最中に半眼になって、ただ立ち尽くしている。
時々涎が出て、下の伯父がハンカチで拭いてくれた。
まわりが挨拶する動作に合わせて会釈する。
今までみたことのない父の行動だった。
■味覚障害2003/7/9(水)
 徹夜に近い状態で、朝ぼ〜っとしていたら、
心因性味覚障害が出てきた。甘さを感じなくなっている。
コーヒーを飲んでも塩辛い。
強い丈夫な頼れる父が壊れてしまったというショックで私もまいってしまった。
■MRI2003/7/10(木)
 病院で父の頭部MRI撮影。
「多発性梗塞巣及び虚血性変化」
「左内頚動脈の海綿静脈洞部に狭窄を認めます」
「脳実質には明らかな異常は認めません」
という診断。
アルツハイマーではなく、初期の痴呆症との診断。
脳の大部分に脳梗塞が起きている。
これからは良くなることはないので、
現状を維持させるか、新たな経験をさせて脳を活性化させるだけ。
痴呆症という病気に向き合わなければならなくなったと覚悟した。
私の味覚障害も1日で戻った。そのかわり疲れから出た椎間板ヘルニアの痛みが辛い。
■水墨画2003/7/10(木)
 水墨画を描かせたら、アンバランスな絵になっていた。
漢字を忘れる。
時間が経った頃、一緒に描いていた私の作品を見て、
「これは誰が描いたんだ?」という。
■うちに帰る2003/8/10(日)
 痴呆の症状が進行している。
「うちに帰る」といいながら自転車に乗ってどこかに出かけようとする。
「今いる場所はどこだと思う?」と聞くと考え込んでいる。
■書道2003/8/14(木)
 父がまともな字を書いた。
ボケた症状のときは、小さな字が書けないようで。
今日は色紙に書いても見事な文字を書く。
ただし、印が上下逆だった。
■四十九日法要2003/8/17(日)
 父の実家に姉と送っていく。
伯父たちが面倒みてくれた。
父は疲れるらしく、座布団を枕にして寝てしまう。
昔話をすると、脳が活性化するらしく、
伯父たちも一生懸命父の相手をしてくれた。
■知らない2003/8/18(月)
 18日午前0時40分過ぎ。
父が自転車に乗って出かけようとするので、
「どこに行くのかな?」って聞くと、
「あっちの教室に行かなきゃ」と。
「教室はここしかないんだから、家の中入ろう」といって入れると、
「他のとこで、教えるんだから、今から準備しなきゃ」って。
んで、「ここはどこだかわかる?」と聞くと、考え込んで答えられない。
「ここはオヤジさんの家だよ。住所は〜〜で、ここに住んでるんだよ」っていうと、
解らないみたいようで。
「書道は水曜日と土曜日にあるけど、今日はまだ日曜日で真夜中だよ」といっても解らない。
父の実家に行ったことを話したら、少し思い出してきたらしく、
「式はどうだった」とか、「お墓に行った」とか、
「おじさんが免許取ったときの話なんかしたよね」と
思い出すように話したら、なんとなくぼ〜っとしながらも、
法要のことは話すようになったんだけど。
面倒なので梅酒飲ませて寝かしつけた。
疲れたんだろうけど、さっきの行動は完全にボケてた。
住所・名前・現在いる場所が言えないのと、
妄想のなかで、別の場所で書道を教えると思い込んでる。
真夜中に行動しないように監視するのは無理があるから、
どうにか寝かせる方法はないかなと思ったり。
薬使えるなら飲ませて寝かせるんだけど、
前にかかった先生はあんまり薬は薦めないっていってたしなぁ。
もう、このままならどっかに入院させないとヤバイかな。
どーすりゃいいでしょうかねぇ。
自転車の鍵をしてしまって、夜中動けないようにすると、
歩いてでも出かけそうだしなぁ。
今日疲れてボケ進行したとしても、かなりひどくなってるし。
こんな調子だと、旅行なんて無理だろうなって思う。
朝になって、姉にしばらく会ってないと言い出す。
昨日法事に一緒にいったでしょ?というと、わかってるよって訂正する。
もう夜中にうろついたこととか、思い出せないようで。
そんなのわかってたよといいながら、覚えてないらしい。
住所と今いる場所を言ってみてといったら、今日はちゃんと話せた。
■検査2003/8/20(水)
 父のPET(ペット)検査。
MRIより詳しく中身がわかるっていうので、脳の検査をしてくれるそう。
予想はかなり脳の萎縮が進んでいるだろうけど、
今後どうするかを診断するにもいいとかで。
診断は、頭にかなりの数の脳梗塞が出ていて、痴呆の中期。
アルツハイマーの症状ではないらしいので、
これ以上の進行を遅らせる処置しかないそうで。

痴呆のテスト:
100から7引くといくつ。
そこからさらに7ひくといくつ。

箱に「時計・歯ブラシ・スプーン・カギ・鉛筆」が入ってて、
それを一度見せられて覚えてくださいといわれて、
他の質問をいくつかしたあとに、
さっきの箱になにが入ってましたか?と聞かれる。

今日は季節でいうとなに?
住んでる地方は何地方?

普通の人ならすらすら答えられる内容が、
本当に答えられないみたいね。
脳が萎縮すると、こんな感じの質問も答えられないんだなと。
■そろばん2003/8/28(木)
 自覚してきたのか、自分から進んでいろいろ試してみようと思うらしく、
父がリハビリとして「そろばん」を引っ張り出してきた。
痴呆症が始まると、四則演算ができなくなる。特に、引き算が難しくなるようで。
普段なら簡単な計算が出来なくなっている。
1,000-350=650
1,050-350=700
こんな簡単な計算が咄嗟にできない。
筆・墨・紙などの月謝以外の販売もあるので、お釣りの計算が難しくなってる。
何度も計算しようとしてる。しばらく付き合いますか。
■博物館2003/8/29(金)
 お昼にお蕎麦を食べに連れ出して、そのまま博物館に。
市内のビルの間にあり、中に入ると森のある公園の一角に建っている。
お散歩するには最適。蝉が大合唱していた。
博物館であれこれ見ていたら、やっぱり「もう帰ろう」って。
興味のあるものには関心を示すけど、自分の趣味じゃないものを見ることが出来ないようで。
疲れやすくなってる。ついでにイスに座って30分くらい涼しいところで寝てきた。
■博物館2003/8/29(金)
 お昼にお蕎麦を食べに連れ出して、そのまま博物館に。
市内のビルの間にあり、中に入ると森のある公園の一角に建っている。
お散歩するには最適。蝉が大合唱していた。
博物館であれこれ見ていたら、やっぱり「もう帰ろう」って。
興味のあるものには関心を示すけど、自分の趣味じゃないものを見ることが出来ないようで。
疲れやすくなってる。ついでにイスに座って30分くらい涼しいところで寝てきた。
■フードミキサー2003/9/1(月)
 健康には野菜をミキサーでジュースにして飲むといいと、
誰かに教わったらしく、電気店にてミキサーを購入。
老人でも怪我をしないようなものを選ぶことに。
■カラオケ2003/9/3(水)
 リハビリを兼ねて、カラオケに行く。
昔の曲を歌うと、脳の活性化になるかなと。
思った以上にレパートリーがあるのには驚いた。
さすがに年寄りに英語の曲を聞かせるのはどうかと思ったら、
意外と知ってて喜んでくれたり。
画面見て、歌詞を思い出しながら歌うのはいいみたい。
■ドライブ2003/9/4(木)
 父の知り合いを連れて、姉の運転でドライブに行く。
「大谷の平和観音」を参道から入って見てきた。
木馬の乗り物とか、ブランコに乗ったりして、ちょっと童心の気分に。
階段で観音像の後ろに上がれる。父も登って来た。
その後、長岡の百穴に。洞窟が岩肌にボコボコ開いてる。
お昼に「もんこっく」にて韃靼蕎麦を食べて、
午後茂原の温泉に入る。
同行してくれた知り合いに、
「父の電話で迷惑かけてます」と言ったら、
「気にしないでね。」とかえって励ましのお言葉をいただいた。
■北海道旅行・東京前泊2003/9/19(金)
 いとこがやっているイタリアンレストランにて、
父は数年ぶりに会ういとこに感激していた。
その後、新幹線にて東京へ。
座席にまともに座っていられない。通路に体を出してしまったり、
まわりをキョロキョロと見回している。
切符を持たせておくと失くしそうなので、預かる。
東京駅のロッカーに荷物を預けて、皇居まで散歩。
万歩計が7,000超えた。
東京から蒲田に移動して、駅前の「歓迎(ホワンヨン)」にて夕食。
羽根付き餃子と、ショウロンポウと、スープ餃子を頼んだ。
東急で千鳥町に移動して、横山大観ゆかりの宿に着く。
部屋が斜めに傾いている所など、古い部屋を感じる。
父は一人で男用浴室に。部屋からは急な階段を下りて行く。
戻って来るまで部屋で待機。間違わずに戻って来れた。
入浴後、俳句と墨絵を描こうと姉が持参した道具を並べる。
俳句の文字数を数えて作ることができていない。
夜中起きだして着替えはじめる。
朝早く起きて羽田に移動ということが気がかりらしい。
無呼吸症のイビキをかく。
枕の替わりにバスタオルを巻いたもので代用。
■北海道旅行・羽田から札幌へ2003/9/19(金)
 電車にて蒲田に移動。タクシーにて羽田空港へ。
台風の影響で沖縄便は天候調査中とか。北海道便は大丈夫のようで。
空港のトイレに行った父は座っていたイスに戻れず、
一人でふらふらと別の方向に歩き出していた。
あわてて連れ戻す。
千歳に着いたら、気温14度。肌寒いけど空気が澄んでいる。
レンタカーを借りて道央自動車道を小樽に移動。後ろの席で寝たり起きたり。
途中PAでソフトクリームを食べる。子供のように喜んでいた。
小樽で回転寿司の昼食を取る。
運河を見て、ガラス店散策。ガラナを飲む。
札幌まで移動の最中に高速道路から虹が二重に見えた。
私を見て、「うちの娘に似てる」と言い出す。
35年前に知り合いだった人が目の前を通ったと言い出すなど。
かなりおかしくなってきている。
札幌の大通り公園でとうきびを買ったら優しい売り子さんが、3つに切ってくれた。
市場を覗いたりしてホテルに。
「迎えに来てもらうから。家に帰る」と言い出す。
札幌にいることが理解できていない様子。
父はベッドで仮眠する。
すすきのに行こうとしたが、父の状態を考えたら無理と判断。
ホテルの近くで信玄というラーメン店を発見。
味噌ラーメンを食べたらおいしかった。
食後に散歩。札幌に路面電車があることに驚いた。
夜、起き出した父はホテルのドアを開けて、
非常階段の位置まで行き靴を履こうとした。
姉が発見して連れ戻す。オートロックの部屋だったので、
気付かなかったらどうなっていたことか。
■北海道旅行・札幌から滝川へ2003/9/19(金)
 滝川に移動。途中、砂川SAで休憩する。
父がトイレに行っている間、私が待機して、
戻って来たのを確認してから姉に引き渡す。
一人で行動すると、元いた場所に戻って来れない。
滝川のスカイパークで軽飛行機に乗る。
パイロットは自衛隊あがりの海谷(かいや)さんという人で、操縦がうまい。
父は自衛隊の話をしたり、昔魚釣りをした場所を見たりして、かなり饒舌になった。
ジンギスカンの松尾本店にて昼食。懐かしい味だった。
昔話を昨日の出来事のように話す。
その後、住んでいた場所の近所を散策。すぐに飽きたのか、「もう行こう」と言う。
いつか姉と二人だけで、「ここにお父さんと来たね」といいながら旅行するんだろうなと思った。
道の駅で評判のソフトクリームを食べる。牛乳の濃い味がしておいしい。
宿泊先のまるか高原で、コスモス祭りを見る。
部屋の隣がトイレだったが、その位置さえも解らないようで。
廊下でしばらく立ち尽くしたりしていた。
夜中服を着てどこかに行こうとする。あわてて止める。
眠れないようなら、なにか絵でも描いたら?と紙と筆を渡すと、
描きながらすぐ飽きて横になる。
昼間購入したラベンダー入りの枕が効いたのか、
落ち着いて眠りについたようで。
■北海道旅行・滝川から千歳〜羽田2003/9/19(金)
 父と姉は朝の散歩に。
カメラを手にした父は嬉しそうにシャッターを押していたそうで。
オセロゲームが置いてあったので姉と父が挑戦。
ルールが理解できないらしい。
相手のコマをひっくり返すということが出来ない。
自分のコマの色もどちらか解らなくなる。
朝食後展望台まで移動したら、雲海のパノラマが。広さにため息。
一般道を千歳に向かう。父はほとんど寝ていた。
途中で巨大な水車を見る。農業に関する展示物には興味を示していた。
昔話をするときはいきいきしている。
高速で千歳へ。昼の食事処に良さそうな場所がなく、
早めに車を返却して千歳空港に移動。
かに天丼とごま蕎麦を食べる。
疲労のピークに来ているのか、目が半眼になっている。
予定便より早めの便に乗れるように姉が手配してくれた。
待っている時間そわそわしている父。
無事羽田に着いてから、モノレールで移動。
疲れが出たのか、「車で迎えにきてもらう」と言い出す。
しかも、父の実家のいとこに車で迎えにきてもらうと言い出すので、
「これから新幹線に乗って帰るよ」となだめた。
「歩いて帰る」というのには参った。
新幹線では、まっすぐ前を見て座っていられない。
持っていたバックを開けたり閉めたりを繰り返す。
お財布を出してはチャックを開けたり閉めたり。
キョロキョロとまわりを見回したかと思うと、いきなり大声を出す。
3歳くらいの子供の行動のようだ。
どうにか駅に着いて姉と別れ、電車・タクシーにて自宅へ。
■昼酒2003/9/24(金)
 父がジュースと焼酎を間違えたらしく、赤い顔していた。
一口飲んだくらいじゃわからないだろうし。
「これはお酒です」って書いてあっても缶で判断できなくなっている。
■運動会2003/10/4(土)
 近所の小学校が運動会。
高齢者の招待で父もでかけていったんだけど、
最初受付をやるもんだと思い込んでたみたいで。
出番ないから帰ってきた〜ってつまらなさそう。
だいたい、小学校の運動会の受付なんて、
外部の人に頼まないっていうのに。
招待→受付に招待状を出してください という文章を
どう勘違いしたか、受付をやると思ったらしく。
そうやって、文章の読解力もなくなってくるようで。
■醤油2003/10/16(木)
 食事のときにお豆腐に「ごま油」かけて食べている。
お醤油は?っていうと、ごま油を持ってきて、これって。
味も醤油と思い込んでいるようで。
ものの認識がおかしくなってきてるみたい。
■ドライブ2003/10/20(月)
 父と、父のお友達と、姉と4人でドライブ。
紅葉がかなり下まで降りてきてた。
食事の後座りながら寝てしまう。
紅葉を見たとか、楽しかったとかを思い出せればいいのだけれど。
もう、あと何回連れていけるかどうかという感じ。
毎日何かを忘れていく。
夜の7時を朝の7時と勘違いするし。
今日は、子供の名前が正確に書けなかったのを指摘したら、
何が間違えてるかを理解できていない。
「彩」とか、「治療」なんて文字を間違えてる。
もともと書けたものが解らなくなるのって、
本人にもかなりショックなようで。
だんだん人間が壊れていく過程を見ている感じ。
書道の教室も子供の部をやめるということで、説得した。
今までやってたことをやめるというのがなかなか難しいようで。
お金貰って教えるには、あまりにも文字を忘れている。
本人もやっと自覚したようで。辛いもんですねぇ。
■夜中に郵便局2003/10/22(水)
 夜10時半ごろ、またまた自転車に乗って出かけようとした。
どこいくの?と聞いたら郵便局へ行くそうで。
「夜中の10時半だよ。今行っても郵便局やってないよ」
と言うとなんだかぼーっとしながら戻ったけど。
本人は郵便出しにいかなきゃって事が優先されちゃって、
時間がどうとか、暗いなんてのは理解できなかったみたい。
■骸骨2003/10/25(土)
 夜中11時30分過ぎ。
父が青い顔して部屋に入ってきた。「そこに骸骨がいるんだよ」と。
「あの人は誰なんだ?」といいながら、「教室にも一人いるんだ」って。
一応書道教室の方も見てみたけど、誰もいない。
「骸骨はどこにいたの?」と聞いてみると、
いつもズボン置いてある場所に誰かがもたれてて、頭が骸骨なんだって。
「そこにいる人は?」と指差す方向に、ジャケットが脱いである。
「脳がそう見せてるんだから、大丈夫。
これからいろいろ見れて楽しいぞ」と言ったら、笑ってた。
やっと自分が着ていた服だったと納得したらしく、
布団に入って寝てくれた。
以前もコードを見て、「家の中に水が流れてる」とか言ったり。
本人はそう見えてるのだから否定もできない。
見えてるものを直接触らせて、違うという確認をして、
やっと納得するようで。
■名前を書く2003/10/27(月)
 父が携帯も、身分証も持たずに出かけてしまったとして、
万が一事故に巻き込まれたり、どこかで倒れたりしたらと思うと、
個人を特定できる何かがないと困ると思い、下着に名前を書く提案をしようとした。
正常な成人男性が、自分の下着に名前を書かれるというのは、
ずいぶんと屈辱的な感覚にならないだろうか。
痴呆症のボケ状態なら抵抗ないだろうけれど、
まだらに症状が出てるので、しっかりしてる時に嫌だと感じたらどうかなと。
それとなく、作り話をした。
「ニュースで老人が行き倒れていて、誰かも解らずに数日放置されたんだそうで」
そんな話から切り出してみたら、
「以前住んでいた家の近所に住んでいた奥さんが、
2年後に資材置き場で発見された」という話を父がした。
行方不明で実家や友人の所などを捜索したが手がかりがなく、
中学生がボールを拾おうとして入り込んだ資材置き場で発見されたとか。
「もしもって事もあるしなぁ」と納得している様子。
下着に住んでいる市と名前を書くというのには抵抗がないようで。
珍しい苗字だと、苗字だけ書けば個人が特定されるので便利。
■約束2003/10/29(水)
 ある子供の賞状に書かれている名前の文字が違っていたらしく、
今日書き直して欲しいという連絡を昨日貰った父は、
朝から、おかしな行動をしていた。
午前9時15分の時計を午後の3時45分だと勘違いして、
「まだ取りに来ないのかな?」とうろつく。
「TVの時間見て確認してみて。まだ午前中だよ」というと、
一度は納得したのに、数分後、また同じことを言う。
何かを約束すると、その内容だけが頭に残っているみたいで、
時間とか、相手の都合などはまったく考えていない。
今日はかなり痴呆の症状が出ている。
専門学校のペン字の講師をしていた頃の名簿を取り出してきて、
「ペン字のお手本書かなきゃなぁ」と言い出す。
「もう、ペン字やる人がいないから、お手本はいらないみたいだよ」と、
その名簿をこっそり捨てた。
気付かれないうちに、少しずつ重複している名簿などを捨てないと。

お昼に近くの餃子屋さんに行こうと散歩。まっすぐ歩くことが出来てない。
どんどん左に傾いてしまう。左側で歩いていた私に何度もぶつかる。
食事して、別の道から戻る。少し普通になってきた。
その後、夕方暗くなってから、門のそばに置いてあったゴミ袋に、
なにか話しかけている父。
「車に乗ってる人が寒そうだから家に入れてあげないと」と言い出す。
「知り合いのおばさんが運転席に乗っていて、半袖で寒そうだ」と。
懐中電灯を持ち出して、車の中に誰もいない事を確認させると、
確かに乗っていたのがみえたそうで。
脳が妄想を見せているんだろうなぁ。
年寄りになると、自分の住所も名前も電話番号も言えなくなるらしいので、
試しに聞いてみたら、15分くらい考え込んでいる。
いよいよ来たなぁと実感。
こちらから一度言ってみると、復唱してちゃんと言えた。
「何でさっき出てこなかったんだろう?いない人が見えたりして変だ」と、
自覚している様子。
賞状を書かせてみたら、森という字が桑の下の木が抜けた字になっている。
さらに、準という字が書けてない。
しかたなく、「今日は調子悪そうだから、私が書くね」と言って、
かわりに賞状を書いた。
取りに来た生徒のお母さんに「ご迷惑掛けてすみません」と父の症状を説明して、
丁重に謝った。教室の閉鎖も考えなければ。
■普通2003/10/30(水)
 朝から父は元気。ファンヒーターの灯油を入れていたので、
様子を見ていたら、普通(正気)だった。
午前9時には、ちゃんと着替えて火の元確認して、戸締りして、携帯電話持って。
「温泉に行ってくるよ」と元気に自転車に乗って出かけていった。
昨日のボケた症状がまったく出ていない。
■書道2003/11/3(月)
 脳を使ってないと、睡眠時間が少なくて済むのかな?
夜8時くらいに就寝したはずの父は、10時には起きてきた。
2時間で熟睡してしまうようで。
起きたらご飯を食べるって習慣があるのか、食事の準備をしている。
「夕方お寿司食べたから、今から食べると食べすぎになるよ」と話しかけると、
「あれ、そうか。じゃあ明日の準備だけしているよ」と気付いたようで。
その後何かを書いてるなと覗いてみたら、競書用の作品を書いている。
行書の8文字の作品が綺麗な字で書かれている。
文字をみて、今日は正常だなと思ったり。
このまま朝まで書くつもりなのか、ちょっと様子みて寝ることに。
■鉄棒2003/11/8(土)
 前回凄いボケぶりだった父も最近少しまともな日が続いている。
午前中に子供が書道に来た。
やめずに続けたいとのことで、しばらくは土曜日も教室をあけておくことに。
お昼を食べに国道沿いの若菜という蕎麦屋に行く。
三種類のトッピングが楽しめるお蕎麦を食べた。
コンビ二で暖かい紅茶のペットボトルを購入して、
和菓子屋さんできんつばまんじゅうを購入。
近くの公園に散歩に行く。
鉄棒とうんていがあったので、ぶら下がってみる。
父もチャレンジしていた。
両手で自分の体が支えられないことに愕然とした様子。
「体力なくなったなぁ〜」といいながら笑っていた。
自分の体力を自覚するのも必要なことなんだろうな。
■連れ戻し2003/11/9(日)
 夜8時に「今日は書道の集まりがあるから出かけてくる」と言うので、
「まだ夜だよ、朝じゃないよ」というと理解できていない様子。
一度寝かしつけて、ほっとした所で外から自転車の音が。
あわてて見に行ったらすでに自転車が無い。
車で追跡して、300m先の路上に走る姿を発見。
「今夜の9時だよ。どこに行くの?」というと、
「10時に皆集まるんだから、自転車だと1時間かかるし」と。
とにかく家に戻るように説得すると素直に家に戻った。
夜の10時に書道の集まりがあると思い込んでいる。
思い込んでしまったら、こちらの話はいっさい理解できなくなっているし。
書道の集まりをまとめてくれているおばさんにTELして、
明日の昼10時だと話してもらうことに。やっと納得したのか寝てくれた。
今夜はどんな行動するか予測ができないので、
自転車のカギをして、普段と違う場所に自転車を移動して、
シートをかけた。
介護してる方が怒っちゃダメだってのは解っていたはずなんだけど、
さすがに今日はキレた。はぁ、まだまだ未熟だなぁ。
痴呆症の症状が出てるときは、本人は思い込んでいることが正しいわけで。
夜なのに朝だと思ったり。(暗さは関係ないらしい)
約束や予定があると、すぐ実行しないと気がすまないらしい。
次の日の約束をすると前日から動くようで。
また夜中に自転車乗り出したりしないように、徹夜して様子みることに。
■任意後見2003/11/11(火)
 日曜日の夜、あれほど出かけようとしてた父は、
月曜日に雨が降ってたことを理由に書道の集まりを断ったようで。
(私は徹夜あけで昼間寝ていたので、夕方聞いた)
今日は近くの温泉に行くと出かけて行った。状態は正常のよう。
午後に温泉から戻ってきて、いきなり「軽自動車買おうかと思う」と言い出した。
以前乗っていた車のディラーさんが、新しいカタログを置いていったようで。
自転車で事故を起こす人が多いからって理由らしいんだけど、
もう運転はしないって誓ったはずなのに。
車のディラーさんも余計な事をしてくれるなぁと思いながら、
「自転車が危ないと思うような人は車の運転は無理だよ」と
何度も繰り返した。やっと納得したようだけど。
今後また同じような事を言い出すのだろうな。
サイトを検索していたら、任意後見をしておいたほうがいいという意見が。
「本人が前もって代理人(任意後見人)に、
自己の判断能力が不十分になった場合の財産管理、
身上監護の事務について代理権を与える「任意後見後見契約」を
公証人の作成する公正証書で結んでおく。
家庭裁判所が選任する「任意後見監督人」の監督の下で
任意後見人による保護を受けることを可能にする制度。」
こういう制度があることを初めて知った。
姉と相談してみようかと思う。
■お出かけ2003/11/13(木)
 蕎麦を食べに出流山に父と知り合いのおばさん2人を連れていく。
以前よく来ていた場所はいろいろ思い出すようで。
父がオススメのお店に入ると新蕎麦を食べることができた。
その後栃木市の大名屋敷を観光する。
昔の蔵に収められていた調度品や家具を見て話がはずんだようで。
おばさんたちはよく相手をしてくれている。
車の中で父の手先が冷たくなっているというのに気付いたおばさんたちは、
手をさすってくれたりした。有難いもんです。
父を書道の先生ではなく、友人として扱ってくれるので、貴重な存在。
痴呆症の症状が出ることも納得の上で付き合ってくれる。
■繰り返す2003/11/14(金)
 昨日出かけて手が冷たかったのが、朝方まで続いたようで。
朝風呂に入ってマッサージしたら治ったと言っていた。
手先が冷たくなる原因はストレスもあるのかな。
父なりに緊張しながら日々過ごしているんだろうと思う。
前の日から「明日何かをしよう」と約束するのは危ないとおばさん達にお願いしておいたら、
朝方に電話連絡してきて、「今日年賀状の書き方を教えてほしい」と父に依頼してくれた。
数人集めてくれたようで、父はやる気まんまんで自転車に乗って出かけて行く。
何かをしようという気力がまだあるので、やれるうちは動いて欲しい。
正常な時は自転車もまともに乗って行く。
午後に戻ってきたので、どんなことをしたか日記に書くように勧める。

同じ話題を何度も繰り返すのに慣れてきた。
「それはこの前も聞いたよ」なんて対応はダメらしいので、
何度話しても初めて聞いたように対応してる。
本人にとっては今思い出した内容なのだから。
野菜不足にならないように、夕方寄せ鍋を用意した。
いろいろな海産物と野菜を一度に摂取できるしね。
■時間の勘違い2003/11/18(火)
 夜の10時に昼だと思って行動するのには慣れてきた。
時間は意識させるように「今何時か教えて〜」とか、
「今日は何曜日だったっけ?」と聞くようにしてる。
来週の水曜日に来客予定だったのを明日の水曜日と混同する。
約束とか予定があると、その事だけが気になるようで。
「今週じゃなくて、来週だったよね?」と、こっちがボケてみる。
「26日の水曜日だよ」と教えてくれる。
なんだかちょっとコツが解ってきた。
ボケた人にはそれ以上のボケた態度をすると、
「自分はそんな勘違いしないぞ」と思うらしく、正常に戻るみたい。
参考にしてるサイトに、面白い記述があった。
何度もご飯を食べて、「まだ食べてない」と言っている奥さんに、
介護してるご主人がご飯を食べ終わった直後に、
「さーて、ご飯何食べようか?」と聞いてみたそうで。
「何言ってるんですか、今食べたばかりじゃない。
お父さん、しっかりしてよ」と逆に言われたとか。
それから奥さんは「まだ食べてない」って言わなくなったって。
脳に「しっかりしてよ」って記憶が出来たのかな。
そんなケースもあるんだなと。うちの父にも効果あるかな?
■真夜中の電話2003/11/21(金)
 明け方4時、携帯が鳴る。
誰からだろうと思ったら、父からの電話。
何事だろうと出てみたら、「電話機が故障していて使えない」と言う。
夜中から朝まで家の固定電話を使えないように電源切って置いたので、
故障と勘違いしたようで。
あわてて1階に下りて、様子を見る。
書道教室の普段使っているコードレス電話の隣に、
生徒が使用する赤電話があるのだけれど、コードが引きちぎられている。
「コード切っちゃったら使えないよ」というと、
「修理しようと思ったんだ」って。
赤電話は父が普段使う習慣がないので、
これで発信することはないだろうと繋げておいた。
コードレス電話が使えないので、赤電話も使えないと思ったようで。
電話線を引きちぎってるのには驚いた。
父の携帯には午前3時におばさんに発信した記録が残っていた。
身内にかけるのはしかたないけど、他人にするのは迷惑なだけ。
「真夜中に電話すると相手に迷惑なのはわかるよね?」というと、
「わかってるよ」と返事はするけれど、理解していない様子。
しかたないので、携帯電話も使えないようにした。
朝6時になった時点で、電話を使えるように戻しておく。
これからは、夜中に携帯と固定電話は使えない状態にしないと。
その後「温泉に行くから」と8時に自転車で家を出て行った。
「10時くらいじゃないと開いてないよ」といった数分後には出かけている。
どこかに行こうと考えたら、すぐ実行しないと気がすまないようで。
■解らなくなる2003/11/25(火)
 以前は普通に出来ていた事が出来なくなるって辛いだろうな。
牛乳のパックが開けられない。
横に開いて引き出すという単純な事が無理になってる。
袋を縦に切る事が出来ないので、ハサミを使用する。
今朝は炊飯器をガシガシ叩いていたのでどうしたのかと思ったら、
「内釜がはずれなくなった」と。
流しに内釜が水に浸かった状態で置いてある。
外側だけを見て、内釜が取れないと勘違いしている。
昨日は真夜中に包丁を研いでいる。
しかも、砥石じゃなく、旋盤の石らしい物体で研いでいる。
(それじゃ無理だろうなと思うけど)
「夜中に刃物研ぐのは危ないから、明日の昼間にしようね」
といって止めさせた。
■待てない2003/11/26(水)
 来客が午前中に来るという約束があったので、
夜中から朝にかけて気になって仕方ない様子。
数時間毎に「まだ来ないのかな?」と騒いでいる。
普通の感覚の人なら我慢出来るのだろうけど。
約束があると、それだけで頭がいっぱいになってしまうようで。
本人は2時間毎に熟睡して起き出して騒ぐ。
「まだ来ないから寝てね」と布団をかけると、寝る。
2時間後にごそごそ起き出して、
「まだ来ないのか?」
周りの人間がまいっちゃうよね。
家族の協力がないと、介護する方が先に倒れると思う。
■郵便物?2003/11/27(木)
 朝、袋いっぱいに何かを入れて持ってきた。
「郵便物が届いたんだけど、中身が良く解らない」と言うので、
見てみたら、中身は領収書や、昨日探していた引き換えの控えとか、原稿用紙とか。
混乱してるようなので、必要なさそうなものはすべて捨てた。
重要な書類もそうでない書類も区別がつかなくなっている。
■子供とゲーム2003/11/30(日)
 夜灯油が無くなったので給油していたら、
背後にいきなり父が立っている。びっくりした。
「今、子供とゲームしててさ」と言い出す。
「なんのゲームしてたの?」と聞くと、
「自転車が無いと思ってたんで、自転車がある場所まで歩いていかないといけないんだ」
カギをして置いてあるはずなのにと自転車を見るとそこにちゃんと置いてある。
「自転車ならそこにあるよ?」というと、
「そうなんだよ〜。無いと思ってたから、今から取りにいこうと思ってたらあるんだよ」
「どこにあると思ったの?」
「あっちの家か教室にあると思った」
自転車があったことに納得して室内に戻ったのだけれど。
状況から判断すると、以前は書道教室の子供たちとクリスマスパーティをしたり、
ちょっとした集まりでパーティをしたりしていたのを思い出したようで。
教室も現在の場所以外に数箇所あったから、
他の教室に行かないといけないと思い込んでいるようで。
子供たちと遊んだ思い出が楽しかったんだろうな。
その後様子をみていたけど、落ち着いたようなので寝ることに。
■爆発音2003/12/7(日)
 真夜中1時過ぎ。「ボゥン!」という爆発音が聞こえた。
父がレンジの前に立っている。
テーブルの上にはアルミ皿の焼きうどんが。
「レンジにアルミ入れると火花出て爆発するからダメだよ〜」というと、
「あ、そうか?ちゃんと袋はハサミで切ったんだぞ」って。
だから・・・アルミはダメだって・・・と繰り返しても無駄なので、
「焼きうどんは直火で調理するやつだから、作る時には一緒にやろうって言ったじゃん」
ということも覚えていない様子。
説明書を読まないで、勘違いすることが増えてきた。
事故や火事が心配。
■謎の人物2003/12/9(火)
 命日なのでお墓参りに行こうと車に乗り込んだ時。
「あの人は自転車の修理に来てたのかな?」と父が言い出す。
「どの人?」と聞いてみると、
「自転車のカバーの銀色のシートの下に人がいたんだよ」と。
どこにも人はいないし、シートの下にあったのはゴミ袋だった。
「自転車の修理ですか?って聞いたのに、
なにもしゃべらないで作業してるみたいなんだよ」
父はそこにいる人物が実体として見えていたようで。
「誰もいなかったよ?そういう人がいたように見えたんだね」というと、
「あんなにはっきり見えたし、話しかけたし、いたはずだよ」って不思議がってた。
脳が見せる幻覚とは本人にしてみれば現実に近い状態らしい。
■火の始末2003/12/13(土)
 寝る前にファンヒーターを消すことが出来なくなっている。
カセットコンロの火もつけっ放しになったまま寝ていたり。
ファンヒーターは3時間で消えるようになっているし、
カセットコンロを使用したとしても、ガスが無くなったら消えるだろうと。
定期的にチェックしていても、見ていないところで何をやらかすかは解らない。
夜11時過ぎに何かを書いてる。
「知り合いが書道始めるっていうので、教えにいくんだ。
その内容を計画しているんだ」と。
話を聞いてみると、30キロも離れた田舎で教室をやるとのこと。
「そこまで通うのは無理だから、通信教育のように郵便で送ってもらうしかないねぇ」
というと、考え込んでいる。
知り合いが始めるといっている話も、妄想の産物なんだろうな。
紙には、一般の部・学童の部というのを書いていた。
そのあと幼児の部というのを書こうとしたのか、幼という文字だけ書いていて、
児という文字が変な漢字になっている。
辞書で調べようとしているみたいだけど、調べ方が解らなくなってるようで。
紙に向かって悩んでいるから、「もう遅い時間だから明日の昼間にやったほうがいいよ」と、
梅酒をコップに半分ついで飲ませた。
■施設見学2003/12/19(金)
 午後、老人ホームを見学に行く。
ディサービス・生活型老人ホーム・特別養護老人ホームの一体型ホーム。
介護の程度によって、利用できる施設になっている。
ただし、介護認定が出ないとダメなので、認定審査を受けないと。
ちょうど、ボランティアのグループがフラダンスを踊っていた。
利用者が嬉しそうに見ていたのが好印象。
うちのオヤジと同程度のボケぐあいの人もいて、なかなかいいかも。
生活型老人ホームの部屋は畳で、トイレも車椅子対応。
ナースコールも各部屋に付いている。
ただし、うちの父のように、体は丈夫だけど記憶系の痴呆の人には無理かも。
特別養護の介護を受けるようになってから入所するしかないみたい。
それまでは、ディケアやショートステイを利用して、
施設に慣れるようにしていく形がベストかな。
職員もきびきび動いていて、笑顔がちゃんとしている。
数年後にはお世話になるかもしれないので、見学に行ってきて良かった。
■介護犬2003/12/22(月)
 朝、保険証と銀行カードがみつからないらしく、
あちこちをひっかきまわしていた。
姉の家まで電話して聞いていたのにはまいった。
「どこかに入ってるから、じっくり探してごらん」と探させる。
お昼過ぎにやっと発見したと思ったら、今度は診察券が無くなっていた。
探してる最中にまたどこかに入れてしまったようで。
やっと探し当てたものを重要なものを入れる場所に父に入れさせる。
5分程経ってから、「保険証ちょっと出してきて」というと、
場所が解らない。指示すると出してこれる。
また5分経った頃に「保険証もう一度出してきて」といってみた。
やっぱり場所が解らない。記憶がこれほど低下するものなのかな。
2時過ぎに、「明るいうちに犬の散歩してきてくれると助かるんだけど」と頼んでみた。
犬を連れて出かけていってから1時間近く帰ってこない。
「川の近くの公園まで行ってきた」と帰ってくる。
片道2.5キロくらいの道のりを往復してきたようで。
その後、4時頃気付いたら、また犬と一緒にいなくなる。
最近は何も告げずに外出するので、心配になるけど、犬と一緒なら安心。
2回散歩に行ったという意識はないらしい。
「お散歩ありがとね〜」と私がいうと、犬が疲れた笑顔をしてた。
介護犬お疲れ様。
■薬2003/12/26(金)
 風邪気味だったのと、父もしばらく病院に連れて行ってなかったので、
病院に夕方行ってきた。
症状に大きな変化はないので、以前と同じ薬を出してもらう。
基本的にきちんと薬は飲み続けた方がいいのだろうけれど、
「飲み忘れちゃったらそれでもいいよ」と言っている。
そう言った方がちゃんと飲むようで。
「薬飲まないとダメ」って否定しないようにしてる。
今回は風邪薬も5日分出してもらった。
家に戻ってから、朝・昼・夜の食前・食後に分けて飲めるように小さい袋を作る。
半紙を4分の1サイズにハサミで切って、糊で貼って袋にした。
父は紙をまっすぐに切るとか、糊を付けるとか、紙を貼るということが難しいようで。
小袋の表に「朝前(食前)」「朝後(食後)」と書かせる。
普段やらない事を経験させると脳が活性化するということだから、
こういう地道な作業もいいのかな。
■誰かと会話2003/12/30(火)
 教室で父が誰かと会話していた。
はじめはTVに向かってしゃべっていたかと思ったら、
イスに向かって「すみませ〜ん」と声を掛けている。
「誰がいるの?」と聞いてみると、
「今日は運転カードを持ってきてくれるんで」と内容のわからない話。
「そこにいる人が、一年間無事故だと表彰してくれるものを持ってきてくれたんだ」
父が指差す方向には誰もいない。
しばらく様子をみていたら、父にはそこに誰かがいるように見えてるようで。
立ち上がったと思ったら、TVの後ろに向かってしゃべっている。
「そろそろ遅い時間だから、もう寝ようよ」と梅酒を飲ませた。
コップを持つ手が震えてしまっている。
「じゃあ、TV消して、ヒーター消して、電気消そうね」というと、
いつもならスイッチの位置がわかるのに、今日はまったくわからない。
TVを消そうとして、隣にある机を押している。
「ここにスイッチあるよ」と教えても、押すことができない。
ベッドに寝かせようとしたら、敷布団の下に入ろうとする。
日常生活が普通に出来ない状態になってきたなと感じる。
これから加速するんだろうなぁ。





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